カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「マネー・ファースト!!」②

 オリンピックの開催費用がもしかしたら3兆円を越えるかもしれない、施設の見直しを、という話は都知事選の前からあったはずなのに、そして秋から冬にかけて毎日のように報道されていたにもかかわらず、経費の分担についてはマス・メディアの誰も扱わなかったのはほんとうに不思議です。

 熱心なニュース・ウォッチャーの私も、一時期は全額東京都が持つものと思い込んでいました(正確に言えば最初国と東京都が折半するくらいに思っていたら、小池都知事がさかんに3兆円3兆円というから、ああやはり基本的には開催都市が出すんだなと思いかけた)。ところがその時点では、恒久施設の建設費は地元、仮設の方は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)というように大雑把に振り分けられていただけらしいのです。

都民ファースト!】

 確かに東京都内に新たな競技場を造ると、施設はほとんど都民が利用するわけですから都が費用を持つのは自然です。仮設はどちらが持ってもいいようなものですがテレビの放映権など莫大な収入がありますから組織員会にお願いするのも納得できます。
 しかしその前提に立つと、小池知事が言っていた、
「バレーボール会場は新設の『有明アリーナ』だと404億円、それに対して『横浜アリーナ』は仮設観客席の工事だけなので7億円+αで済む」
は単に経費節約の話ではなくなります。
有明アリーナを新設すると404億円東京が支払わなければならないけれど、横浜アリーナだと仮設観客席の工事だけなので組織委員会が払ってくれる」
 つまり東京都は一銭も払わなくて済むのです。

 同様にボート競技場も、
「『海の森』に恒久施設を作ると328億円(当初計画より圧縮)、仮設主体の施設にすると298億円、宮城県長沼ボート場だと150億〜200億円」
という話でマスコミも盛んにこの三つを並べ、どれが合理的か、税金の無駄遣いにならずに済むか、という議論していたのですが、これを都民ファーストの視点で考えるとまったく別の話になってきます。
「『海の森』に恒久施設を作ると328億円、全額東京都が支払わなければならないけど、仮設主体の施設にすると費用の大部分は組織委員会が支払ってくれる。宮城県長沼ボート場は全額宮城県登米市、そして(仮設部分を)運営委員会が払うから都民の負担はゼロ」

 自転車競技やヨット競技も同じように外に出て行ってしまいました。ただし人気のバレーボールは近場に確保します。つまり、
「オリンピック誘致しちゃったけど、お金もったいないから人気のない競技は誰か引き取って!」
と言っているのと同じです。
 マネー・ファースト。すっかり興ざめです。

【小池さんってトランプに似ているよね】

 東京都千代田区の区長選挙は小池知事が推す現職候補の圧勝に終わりました。自民党東京都連は“内田ドンに支配された悪の帝国”ですからこの結果もうなづけるところです。

 しかし「ファースト」という言葉で支持者の利益を第一に押し出し、常に“敵”をつくって対立軸を置き、力で押して行くやり方は、アメリカのトランプさんとよく似ている気がしません?

  トランプさんの場合は「ウォール街エスタブリッシュメントオバマクリントン、マス・メディア、中国・日本」、小池さんの場合は「自民党東京都連、内田ドン、森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長、石原慎太郎都知事」。
(小池さんの方がいい戦いしてるかな?)

「東京大改革」や“Make America Great Again”を押し立てるところもよく似ています。大改革や再建が必要なほどダメになっているとも思えないのに。

 ただしトランプは国を二分してしまったのに対し、小池さんは都民を一色に染めてしまった、その点はまったく異なります。どちら悪いという問題ではありませんが、ね。