カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「黒板」①

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 羽衣文具株式会社が会社の廃業を発表しました。チョークで有名なあの羽衣です。その名前は知らなくても、写真のようなチョークの箱はどこの学校へ行ってもありふれたもの見覚えのある方も多いでしょう。

 重さといい硬さといい、もちろん慣れということもあるでしょうが実に使いやすいもので、亡くなるのはほんとうに寂しい気がします。

 もっともチョークのメーカーは他にもありますし、現在すでに羽衣もチョークのナンバーワン企業ではありませんから、黒板文化についてはしばらく心配する必要はありません。学校によっては見慣れない箱が取って代わるだけです。気づかずに終わってしまう人もいるのかもしれないくらいです。

 さてところで、黒板は教員にとってもっとも愛着の深い道具です。とにかくいろいろな意味で扱いやすい。広さ、見た感じ、書いたり消したりの動作――中でも書く際のチョークの引っ掛かりは決定的で、きちんとした文字を書くにはあの程度に引っかかってあの程度に滑らなくてはなりません。

 黒板に代わると期待されたホワイトボードはとにかくよく滑り止まらないのです。漢字のカドは取れないしトメもおさまらない。ハライも2割増しくらいで先に行ってしまうのでほんとうに厄介です。さらに、白い表面は目に苦しいし、私などは水性マジックのキャップをすぐになくしてしまうので、説明しながら探し回ることなどしょっちゅうです。他の人だってきっと同じで、だから黒板は今も学校に残っているのでしょう。

 ただし黒板とチョーク、そして文具業界や鹿児島県のみで「ラーフル」と呼ばれる「黒板消し」の組み合わせは、今や学校以外にはほとんど見られなくなってしまいました。
 チョークの粉は吸い込んでも「塵肺」にはならないと言いますが決して健康的な感じはしません。しかも部屋がかなり汚れる。そうとう注意したつもりなのにかなり離れたところの桟にも粉は降り積もっています。
 教員が指を真っ白にして粉を肩からかぶり、子どもが掃除の時間にパタパタと黒板消しを叩く姿は学校によく似合う風景ですが、21世紀の終わりまでこうであってはいけません。何か黒板に代わるものが出てくるはずです。

 そこでさしずめ期待できるのは電子黒板です。
 もちろん現在の大きさではムリで、今の黒板と同じサイズでしかも映り込みがないこと、さらに強度を高めること、この三つの条件がそろわないと学校には導入できません。なにしろ子どもは何をするか分かりませんから、激高した小学生が傘を突き刺しても使えるくらいでないとだめなのです。

 現在の黒板ですら20万円近くしますが、それに代わるものだと高くてもその2倍以下、黒板なら一度購入すれば20年以上使えますし表面を塗りなおせば50年も100年も使えますから、それに匹敵する耐久性も要求されます。
 そう考えると、やはり学校から黒板をなくすことが、容易ではないことは自ずと分かってきます。

(この稿、続く)