「子どもたちはペン先をどこから見ているのか」〜変体少女文字の話�A

 丸文字が成立したもうひとつの要素は筆記用具です(と山根一眞は言います)。

 シャープペンシルとボールペン、特にシャーペンの低価格化が子どもの使用を促し、字を丸くしてしまったのです。なぜかというとシャーペンの芯は折れやすく、鉛筆や万年筆のように斜めに寝かせて使えないからです。ボールペンも深く寝かせることはできない、どうしても軸を垂直に立てて扱うようになります。垂直に立てた上に、手の中で固定してしまうのです。

 するとそれまでは指の前後への伸縮と左右への揺れで書いていた文字が、手首と肘で書かなければならなくなります。毛筆で大きな字を書くのと同じ扱いになるので、繊細な動きができません。

 図�@は万年筆などの筆記用具を使っていた時のペンの持ち方です。これだと指で字が書けます。しかしシャーペンやボールペンはどうしても図�Aのような持ち方になり、指を伸ばすことはありません。

 また、�Aのような持ち方をすると、ペン先が見えないという困った問題が発生します。書いている字が見えないのです。

 万年筆や鉛筆の場合は書いているペンの上からペン先を見ることになります。ところがシャーペンやボールペンでは上から見ることができません。毛筆のように「下から」見るしかないのです。

 ただし毛筆の場合は軸の中ほどを持ちますから下から覗けば穂先が見えますが、シャーペンやボールペンは軸の下の方を持ちますのでペン先が全く見えなくなります。

 そこでしかたなく、一部子は手首をこちら側に反して芯の先が見えるようにします。図�Bのようなやり方です。別の子は体を傾けて横から覗き込み、また別の子は用紙を斜めにして、文を左下から右上に向けて書き始めます。いずれも私たちの良く知っている姿です。

 学校でシャーペンを禁止する理由の一つがこれです。シャーペンでは字がうまくならないのです。ペン習字とはよく言ったもので、本当は万年筆のような「寝せて使う筆記用具」がベスト、次が「寝かせても使える鉛筆」です。学校が鉛筆にこだわるのはそういう意味があるのです。

 学校では小学1年生の段階で正しい鉛筆の持ち方を練習します。しかし入学時にすでに�Bのような握り込む持ち方を覚えてくる子もたくさんいます。正しい持ち方は難しいですし、何より十分力が入らないから、放っておくと自然にそうなってしまうのです。また、学校でいくら練習をしても普段は握り込み、となるといくらやっても上達しません。

 先日、30年前の教え子が同級会を開いてくれました。挨拶をしなければならないので久しぶりにその子たちの卒業文集を開いたのですが、字のうまさには呆れました。勉強なんてまるでしなかった生徒の字ですら、今の子たちよりもはるかにうまかったのです。

「握り込み」だと字がうまくならないばかりか、姿勢が悪くなったり視力にも影響しそうです。何とかならないものでしょうか。