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「美しい文字を書くための条件、鉛筆の持ち方と姿勢」~美しい文字を子どもの財産として残すために②

 字がうまくならないのは、生活のどこかに、
 字を下手にする条件があるのかもしれない。
 ただそれを考える前に、
 美しい字を書くための条件について考えてみよう。
という話。(写真:フォトAC)

 箸についてはトレーニング箸などの補助具を使って基本を学び、日常生活の中で練習するうちにやがて上手くなって定着する。それなのに文字の方は、補助具を使って基本を学び、日常生活の中で練習するにしたがって、逆に下手になってしまう場合がある、それはなぜか――当面考えられるのは、生活のどこかに字を汚くする条件があるということ、練習すればするほどその条件の影響を受けるようになる、そういうことではないかと思うのです。

【美しい文字を書くための条件】

 美しい字を書くにはさまざまな条件があります。その第一が鉛筆の持ち方であり、第二が身体全体の姿勢です。
 鉛筆の持ち方については教科書にもありますし、各文具メーカーのサイトにもありますが、細かな点にまで言及していてわかりやすいのが学研のサイト、
 幼いうちの今だから身につけたい! 本当に正しい鉛筆の持ち方&動かし方

www.gakkensf.co.jp

 簡単ですが的確に表現しているのがトンボ鉛筆のサイトです。
 How toえんぴつの正しい持ち方

tombow-ippo.jp
 学研のサイトだけでもいいのですが、こちらの場合、鉛筆を持った時の軸と紙面のつくる角度に関する言及がなく、その点トンボ鉛筆では、「横から見た鉛筆の角度は60度」「正面から見た鉛筆は20度ほど外側に傾く」ときちんと規定しています。のちのち申し上げますが、この「正面から見て外側に20度」は、決定的に重要なポイントなのです。しかしそれに言及している資料は少なく、私の簡単な調査ではたった二つだけでした。
 また「60度」は融通の利かない数字ではなく、多くのサイトに「45度~60度」と表記されていて、中には「40度~60度」とさらに寝せる持ち方を表示しているものもありました。しかし「《鉛筆》の持ち方」である限り、60度を越える数字(例えば70度あるいは90度)を挙げる例はありません。
 重要な部分ですがその問題に行く前に、まずはもっと基礎的なところから話を始めましょう。

【鉛筆の持ち方の実際】

 学研に従って、文字を書くときの姿勢から考えます。サイトは「正面から見たとき」と「横から見たとき」の理想的な姿勢から説明します。
[正面から見たとき]
 ●両ひじを少し広げる
 ●鉛筆を持っていないほうの手でしっかりとノートを押さえる
 ●両脚の間は少し開く
[横から見たとき]
 ●背中を伸ばし、前かがみにならないようにする。
 ●背もたれと背中、机とお腹の間を少し開ける
 ●足の裏を床につける
 「両足の間は少し広げる」「足の裏を床につける」までは気を配らなくてもいいかもしれませんが、「両ひじを少し広げる」「鉛筆を持っていないほうの手でしっかりとノートを押さえる」「前かがみにならないようにする」の3点は常に注意するよう心掛けたいものです。それがのちのち響いてきます。
 
 姿勢が確認できたところで、実際に鉛筆を持たせます。しかし子どもの場合は最初から、「鉛筆持ち方グリップ」とか「持ち方サポーター」とかいった補助具(Amazonえんぴつ持ち方矯正)をつけてやるのが、私はいいように思います。鉛筆を持つたびに持ち方を思案し確認するのはたいへんだからです。

【決定的に大切なのは可動域】

 小学校で1年生に鉛筆を正しく持たせたあと、まずやるのが直線や渦のなぞり書きです。芯先を自在に動かす練習なのですが、この時の子どもたちの様子をよく見て、必要なら間髪を入れずに指導しないと、この時点でおそらく大きな差がついてしまいます。鉛筆を持った状態で、芯先を大きく動かせる子と、そうでない子がいるのです。鉛筆の持ち方と動かし方に、わずかな違いがあってそうなるのです。
 見てみましょう。

 筆記はペン先の縦の動きと横の動き、そしてその二つの合成である回転運動によって行われます。その動きはどのようにつくられるのかというと、縦は鉛筆を持つ三本の指を手前に握り込むことで、横の動きは手首を反すことでつくられます。その際に支点となるのは手首の外側ですから、芯先がそこから遠ければ遠いほど大きな動きができると考えられます。つまり指を伸ばすわけです。
 
 私は手が小さく指も短い方ですが、その私でも鉛筆を45度まで傾けてから指を手前に引き寄せると4cmの縦線を引くことができます。横線は3cmでした。ところが鉛筆を90度に立てると、わずか1cmの縦線しか引けないのです。横も1㎝。つまり軸が40度だと長径4cm短径3cmの楕円形内部が文字を書くフィールドになるのに対し、90度まで立ててしまうと1cm×1cmの小さな円の範囲にしか文字しか書けない、それ以上に書こうとしたら、肘を使って手首の支点自体を移動させなくてはならないのです。
 これでは字が上手くなるはずがありせん。まるで拘束服を着ながらダンスを習うようなもので、せっかく大きな動き身に着けようとしても、練習するたびに表現は小さく、丸くなっていくのです。

 そう考えて見直すと、小学校高学年から中学生にかけて、軸を垂直に立てて書いている子の何と多いことか。さらによく見ていると垂直どころか、軸のお尻が向こう側、つまり身体の反対に向かってしまい、「紙面との角度は120度」としか言いようのない形になっている子もいたりします。
 あれは何なのでしょう?
(この稿、続く)