カイト・カフェ

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「職人」~日本に残る文化の伝統

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 生頼 範義(おうらい のりよし、1935年―)は私の好きなイラストレーターで、「スターウォーズ〜帝国の逆襲」の国際ポスターを作成したことで世界的に有名になった人です。

 画集も持っているのですが、その中で印象深く述べられているのは「私は画家ではなく、職人だ」という言い方です。依頼者のイメージ通り、あるいはそれ以上につくるのが自分の仕事であって、個性や独創性は極力排している、ということのようです。私にはその気持ちが分かります、というか日本人の多くがその感じ方を理解するはずです。

 職人というのは「自ら身につけた高い技術によって、手作業で物を作り出す人々」と、一応定義することができます。しかし単なる技術者では“職人”とは呼びにくいのであって、そこに“職人気質(しょくにんかたぎ)”と呼ばれるような高い精神性がないとこの言葉は出てきません。

 職人気質とは、例えば「自分の技術を探求し、自信を持ち、金銭や時間などのために意志を曲げたり妥協したりすることを嫌い、納得の行くまで仕事をする傾向」とか「いったん引き受けた仕事は利益を度外視しても技術を尽くし、仕上げる傾向」などをさします。日本人はこの気質が大好きなのです。

 この職人資質によって支えられた超人的な技術は“職人芸”と呼ばれ、今日も脈々と受け継がれています。

 例えば、東京の町工場でつくるビデオカメラ用ベアリングの精度は、欧米のミサイルに使われているジャイロのベアリングより高いと言われています。大阪の研磨工場では機械を使わずに1000分の1ミリ単位の金属研磨を果たします。そこまでの精度は必要ないにもかかわらず、そこまでやらないと気が済まないのです。
 またそんなレベルの高い技術を持っていなくても、大量生産の自動車の出荷に際してもう一度車の下に潜り込んでバンパーの裏の汚れをふき取る、そんな“職人気質”を持った人はいくらでもいます。そこが汚れているかもしれないと思うと落ち着かないのです。

 こうした文化のある限り、日本の製造業に未来はあります。必ず世界のトップを走り続けるはずです。

 しかしこうした文化はだれが育て維持しているのでしょう。こうした頑固さは学校教育ではあまり追求されてないような気がします。しかしいつか身につけてきます。
 日本人のDNAなどといった曖昧な理由にすることなく、今度深く研究してみようと思います。