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「双子は優先的に東大中等教育学校に入れるらしい」~双生児研究の話②

 運動能力はどうやら遺伝的な要素が強いような気がする、音楽や絵画はどうだろう、いやそもそも国語も数学も、理科も社会科も、そういった教科すべてにいて、遺伝的な“頭の良さ”“頭の悪さ”といったものはあるのだろうか?
 この問いに対する答えは実はあります。

 東京大学付属中学校(現在は付属高校と合わせて中等教育学校)は双子研究で有名な学校です。入学予定者の中に最初から双子枠があって、毎年数組の双子が入学してきます。その子たちを題材に、双子のどういう点が似ていてどんな点が似ていないのか、かなり時間とエネルギーをかけた研究成果が残っているのです。

 それによると、いわゆる主要五科(国語・社会・数学・理科・英語)では、相関係数の高い順に理科(0.532)、英語(0.520)、国語(0.501)、社会(0.470)、数学(0.457)となっており、理科が高く数学が低いという特長がみられます。数学は最も才能に頼るところ(先天的なもの)がありそうですが実はそうでもないのです。数学についてさらに細かく調べると、ともに答えが合っていても解法が異なるという例が数多くあり、その点でも数学の能力は極めて後天的、つまり環境因が強いと言えるのです。
 保健体育、芸術はいずれも双子で高い相関係数を示していますが、保健体育のうち体育実技(0.653)は筆記による保健(0.449)よりも相関関係が高く、「芸術」のうち音楽(0.742)は図工(0.393)に比べて著しく高い値を示しています。つまりスポーツ一家は確かに存在し、バッハ一族は遺伝的に生まれ、狩野派は絵師一族という環境によって偉大な画家を次々と生み出したと考えられるのです(そう言えば狩野派には血のつながらない“偉大な養子”が何人もいました)。

 同じ体育実技でもサッカーや野球といったボールゲームは相関が低く、陸上競技や水泳など基礎的な種目は相関関係が高い。同じ陸上でも短距離の成績は酷似し、長距離はそこまでいかない、というもののようです。つまりボールゲームは鍛えがいがあり、短距離走で凡才を選手にするのは容易ではないということです。
 こういうことも勉強しておけば、私たちの仕事にも大いに役立つかもしれません。
 数学が苦手で「オレ、アッタッマ悪いから〜」とか言ってとぼけようとする子がいたら、「数学は頭の良し悪しが一番関係ない科目だ」と言ってやればいいのです。英語が苦手な子には特に何も言わず、がんばらせておきましょう。

 昨日の新聞に大阪市では橋本市長の肝いりで、小学校の1年生から英語教育を始め、6年生までに英検5級〜3級を取らせるようにするとのことです。努力よりも先天的要素の強い教科で、こんな高いハードルを押し付けられるなんて、大阪市の子どもは気の毒です。