私は先生が嫌いです

「先生のこと大嫌いだ」といわれたら何と答える?

 若い頃、先輩の先生からかけられた謎かけです。答えに窮していると、

「『オレだってお前が嫌いだ』じゃ、話にならんでしょ。こういうときは頭を掻きながら『そっかぁ? オレはお前のこと好きなんだけどなあ』と答えるのだ。相手は嫌な表情して何か言うかもしれんが、内心ホックホクで帰っていくものさ」

 私たちはしばしば子どもの挑発的な言葉に傷つきます。日ごろ愛情も手間ひまもかけて付き合っている子たちですから、そんな子から「嫌いだ」と言われて平気でいるのは困難です。しかし翻ってみると、私たちは年がら年中「今の子どもたちの最大の課題は表現力だ」などと言っているではありませんか。あの子たちは自分たちの思いを言葉にできない、ほんとうの気持ちを書き表せない、と。そんな中で「私は先生が嫌いです」だけを正確な意思表明だと捉えることはやはり間違っていると言わざるをえません。

 今手元に現物がないので確認できないのですが、五味太郎の本の中に「赤ちゃんはなぜ泣くのか」をテーマにした一文があって、おっぱいが欲しいから、オシメが濡れているから、眠たいからと続いたあと、最後の一文が「赤ちゃんだから」です。子どもは子どもだからという理由だけで、あらぬことを言ったりやったりするのです。

「私は先生が嫌いです」は、そんな赤ちゃんの夜泣きみたいなものと軽く考え、その場は軽くかわしていいたぐいのものです。そしてしかし、その子がわざわざそんなことを口にした言葉の背景というものについては、慎重にあつかわなくてはなりません。普通の状態の普通の子は、わざわざトラブルを引き起こすようなことは口にしないものだからです。

「私は先生が嫌いです」のほんとうの意味は、「もっと私のことかまってほしい」かもしれません。「勉強が分からなくなって困ってるんだよ」かもしれません。あるいは「今、孤立しそうでヤバイんだよ」、そういうことなのかもしれないのです。

 いずれにしろ、そんな憎まれ口をきく子どもの状況を、じっくり見て対応する必要はあります。