無名の人々

 バンクーバーオリンピックが終わりました。

 閉会式を終えた選手たちは次々と帰国し、そのうちの多くがソチ(ロシア)を目指して新たなステップを踏み出します。しかし彼らよりも圧倒的に早く、ソチへのスタートを切っている人たちがいます。それは国内予選で遮られ、バンクーバーに行くことのできなかった人々です。また、まだ国内では無名で予選会にさえ出ていない小学生・中高生も、大きすぎる夢を胸に、最後のウィンターシーズンを練習に励んでいるはずです。

 子どものころ、私は日本中の子どもたちがだいたい私と同じような暮らしをしているものだと思い込んでいました。しかし大人になって気づいたことは、同じ小学校・中学校の時代を、まったく違った思いを胸に、まったく違った生活をしている子どもたちがものすごくたくさんいたということです。

 もちろん将来のオリンピック選手は、毎朝毎晩、そしてすべての休日を練習に当ててがんばっています)。しかし歌舞伎役者の息子は、同じときを毎日お稽古に明け暮れているのです。

 将来のピアニストやバイオリニストを目指してがんばっている子がいるというのは比較的理解しやすいですが、関取を目指して相撲三昧の子だとか、すでにプロ棋士になることを決め、毎日将棋を打っている子、といったことは子どもたちには見えにくいことかもしれません。小学生のうちから東大を目指して受験勉強に励んでいるといった話は、耳にこそすれ現実には見えません。

 何が良くて何が悪いといったことではありません。しかし同じ日本の小学生なのに、たくさんの子どもがまったく知らない世界で違った努力しているということ、そして数年後、彼らが次々と世の中に出てくるということ、子どものうちから知っていた方がいいように思いました。