カイト・カフェ

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「日本の底力」~アスリートにも芸術家にもする気がないのに、子どもに学ばせる国

 狙ったメダルがさっぱり取れず、イライラが昂じてもうオリンピックなんか見るのはやめようと思っていたらここにきてパラパラと勝ち始めました。思い直してもう少し応援してみようと思います。さて、

 先日、長野県松本市の高校2年生二山治雄さんがローザンヌ・バレーコンクールで優勝したというニュースが届きました。オリンピックと違って事前に何の報道もなかったので、純粋に喜べました(オリンピックの方は期待が大きい分、勝っても“ホッ”です)。2位も日本人、6位も日本人、なんと入賞者の半分が日本人だったわけです(ちなみに6位の男の子は昔の兄弟デュオ「狩人」のお兄さんの方の息子だそうです)。

 これについてかつてのローザンヌの優勝者、熊川哲也さんはこんなふうに分析しています。

  1. 欧米風の食事や生活で日本人の体型が細く美しくなって欧米人に引けを取らなくなったこと。
  2. バレエ団の公演は少ないがコンクールが多いので場馴れしていること。
  3. お稽古ごととしての人気があり、バレエ学習者の裾野が広がっていること。
  4. 勤勉さと努力を惜しまない日本人の真面目さ。

以上の4点です。

 私の生活の近辺には見当たらないので気づきませんでしたが、バレエ教室は全国に4630か所、学習者は40万人以上もいるそうです。国内で行われているバレエコンクールは100を超え、選ばれた人たちはそれに向けて日夜励んでいます。

 しかしだからといって皆がプロのダンサーをめざしているわけではなく、 “音楽があって体も動かしと、子どもの情操には一番いいのでは”とか“女の子らしく、しかも我慢強い子どもを育てたかった”とか、要するにピアノかお習字かバレエかといったレベルで習いに来ている子が大半なのです。まるっきり趣味のレベルです。

 欧米の場合は違います。バレエをやる子は最初からダンサーをめざし、厳しい試験を経て国立バレエ学校に入るところから始めるのです。したがってバレエ人口は最初から限られているのです。

 私も二人の子どもをスイミングスクールやピアノ教室に通わせました。もちろん水泳選手やプロの演奏家にしようとしたわけではなく、実際にアスリートにもピアニストにもなりませんでした。では習わせたこと自体がムダだったかというと、そうでもありません。二人とも別のスポーツでそこそこの活躍ができましたし、音楽は今も生活の中にしっかりと溶け込んでいます。

 また、もっと広い視点から見るとこうした“結局は趣味程度にしかならなかった人々の努力と投資”が広い裾野となって日本全体の底上げをしているのです。

 二山さんがローザンヌで優勝できたのは、私たち凡才と凡才の親たちのおかげかもしれません。そう考えれば努力も金も惜しくはありません。