落ち着きがないなど、行動や認知に問題を抱える児童を医療につなげようとしても、子どもが薬漬けになるのではないかという恐怖のために二の足を踏む保護者がいる、というお話がありました。
確かにADHDのお子さんに使われるリタリンが覚醒剤代わりにされたりすると、親御さんの心配も理解できないわけではありません。しかし薬効を知る私たちからすれば、みすみす成長のチャンスを逃していくようで、あまりにももったいない気がします。
私はこの薬について、以前、先輩から次のような説明を受けたことがあります。
「これは人の話がよく聞けるようにするための薬です」
この表現は、
この二つ点で非常に本質をついたものと言えます。
言葉以外に武器を持たない私たちからすれば、まず話を聞いてもらわなければ始まりません。そしてADHDの子たちは、じっくり話を聞いていることが難しい子たちなのです。
薬の力を借りて「人の話をよく聞ける状態」を生み出したところで、きちんとした教育を行い、自分をコントロールできる人間に成長させる、それがこの薬を用いる意味です。
逆に言えば、薬漬けを心配するなら、
「教育を丁寧に急がなければならない」
はずです。
「これは、人の話がよく聞けるようにするための薬です」
この言い方なら、親御さんも分かってくれるのかもしれません。また、この言い方をしておかないと、ただ薬を飲ませて静かにさせ、それで終わりということにもなりかねません。
*リタリンは、現在、ADHDの子には処方されません。現在使われているのはコンサータという名前の徐放性(徐々に成分が放出される)の薬です。