勤務の帰りに、自宅近くで、農道を横切る狐の姿を見ました。初めてだったので、半信半疑。翌日学校に来て小沢先生に聞くと、確かにあのあたりには狐が出るとのこと。それからしばらくしてまた遭遇しましたから、間違いありません。動物園以外で生きた狐を見たのは初めてなので、かなり興奮しました。
狐が変身するとき、頭に載せる葉っぱは何でもいいというわけにはいきません。それはクズの葉と相場が決まっています。表が濃い紫、裏に返すと真っ白というのが変身向きなのです。
浄瑠璃や歌舞伎に、和泉(大阪)信太(しのだ)の「葛の葉」という狐の話が出てきます。「鶴の恩返し」とそっくりな話なのですが、「つう」が残して行ったのが素晴らしい反物だったのに対し「葛の葉」は男の子をひとり残していきます。そのとき、別れにおいていった短歌、
「恋しくば 尋ね来てみよ 和泉なる 信太の森の 怨み(裏見) 葛の葉」
は、特に有名です。
しかし、たいして面白くもないこの話が何故かくも有名なのか、今回調べ直して初めて分かりました。
このとき残された子どもが、後の安倍晴明(陰陽師)だったのです。
それにしても、今でも狐の出る町に住んでいるというのも、けっこう幸せなことなのかもしれないと思ったりもしました。