カイト・カフェ

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「ロシア人の名前」~名前の不思議①

 まだ私が小学生だったころ「大学生の愛読書 ベスト10」とかいうのが新聞にあって、その第一位がドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」でした。幼心にも私は、大学生になったらこれだけは読もうと決心しました(そして実際に、学生時代に2回読みました)。

 その「カラマーゾフの兄弟」が今年の8月にベストセラーに入ったと聞いて、新訳の「カラマーゾフ」を2巻買い求め、折を見て読んでいます。しかし11月になっても第1巻が終わりません。「カラマーゾフの兄弟」はとにかく最初が冗長で取っ付きにくく、入り込むのが大変なのです(それに比べると「罪と罰」の方はいきなりのサスペンスですので、こちらは二十代のはじめ、毎年の正月の仕事として5~6回読むことができました)。

 改めて読み始めてまず面白く感じるのはロシア人の名前、そして実際にロシア文学を難しくしているのも、この人名の表記です。

 ロシア人の名前は、個人名・父称・家族名から成っています。そして、例えば山田一郎というロシア人がいて、そのお父さんが太郎だとすると(そんなのはまずいないが)、その人はイチロウ・タロウビッチ・ヤマダスキーといった名前になります。山田太郎の子どもの一郎という意味です。一郎君に妹の花子さんがいるとすると、その子はハナコ・タロウビッチ・ヤマダスキーになりそうですがそうではなく、ハナコ・タロウビナ・ヤマダスカヤとなります。ビナというところとスカヤというところが違ってきます。
 さらにハナコにはハナーチャ、ハナーニャ、ハナといった3種類以上の愛称が存在しますから厄介です。本を読みながら、新しい登場人物かと思っていると、同じ人が繰り返し出てきている、ということがしばしばあります。
・・・と書きながら、「人名」ということについて、いくつか思い出したことがあるので、次回、お話しましょう。