就寝中、しばしば息が止まっていると妻から言われた。
以前にも調べたことがあるので気にしないでいたら、
夜中に何度も目覚め、睡眠時間がどんどん削られていく。
私の体に何が起こっているのだ?
という話。
(写真:フォトAC)
息子アキュラの結婚式があって何かと落ち着かなかった8月が終わり、日常が戻ってきました。老人にとっての《日常》の一部は、病院に通うこと、通わないにしても病気の心配をすることです。
【あなた、息していないわよ】
結婚式の余興のひとつに新郎新婦が互いに「あ~ん」と言い合いながらケーキを食べさせる《ファースト・バイト》というのがあって、親がその手本をさせられたという話はしました。いい齢の老夫婦がやるのでまるで介護の練習みたいだったというあの件です。
しかしあとから考えると、新婚の夫婦しかやらなかった、あるいは新婚の夫婦でもやらなかった「手をつなぐ」とか「腕を組む」とか、「一緒に風呂に入る」とか「添い寝する」とかが、今後は多く必要になってくるかもしれない、と思い始めたのです。昔と違って命にかかわりますから――。そのうちのひとつが、「ともに同じ部屋で寝る」ということです。
96歳の母にひとり暮らしをさせている関係で、毎晩実家に行って泊まる生活がもう10年も続いています。したがって夜は夫婦別の部屋、というかそもそも別の家で寝ています。
夫婦の亀裂とか心理的別居とか言うのとはまったく関係ありません。必要なら母に言って自宅に泊まればいいだけで、今年の夏も娘の一家が遊びに来た時は一泊だけ、自分の家で眠りました。その翌朝、妻が、
「昨夜遅くに寝室に行ったら、いびきはかいていないけど、あなたの寝息、ものすごく大きくてびっくりしちゃった」
と言います。
「そのうち息が止まっちゃって、なんかすごく気味が悪かった――」
「時間にしてどれくらい?」
と、私。
「1~2分かな、そんなに長くはなかった」
「1~2分止まっていたら死が目前に見えてくるだろ。そこは『気味が悪かった』じゃなくて心配する場面じゃないか?」
「あ、そうか」
「『ああそうか』じゃなくて、それで朝起きたら隣りに私の死体が転がっていたということになったらどうするのよ」
すると妻は少し考えて、
「そうよね、あなた。やっぱり病院に行ってみて--」
どうやら私が死体になることより、自分が死体のそばで寝ているかもしれないことの方が心配になったようです。
しかし私は、すぐに病院にはいきませんでした。2年前に一度検査をしたことがあって、確かに睡眠時無呼吸症候群はあるものの中程度で、これとった処方がないことを知っていたからです。
【夜中に起きる回数が尋常じゃない→睡眠時間の激減】
ところがアキュラの結婚式が終わったあたりから、夜しっかり眠っていられなくなって急に不安になってきたのです。
寝つきが悪いわけではありません。むしろいいくらいです。それなのに夜中に何度も目が覚める。高齢者ですからもともと「朝までぐっすり」という訳にはいかなかったのですが、それでも7月ごろまでは夜中に1度、多くても2回程度しか起きなかったのが、3回、4回と起きるようになる。その都度ちょっと心配なのでトイレに行ってみるのですが、何回も行っているので出るわけがない。考えてみればそもそも最初から尿意で目覚めていたわけでもない。
しかもその目覚めはすこぶる良く、《よく寝た、そろそろ起きる時間かな》と起き上がって灯りをつけ、時計を見ると午前2時、あるいは1時。それがついに10時に消灯してぐっすり寝たつもりで目覚めた時刻が11時だった時には、さすがに考え込んでしまいました。何かがおかしい――。
いったん起きてからまた寝ようとすれば眠れないこともなかったのですが、次第に次の眠りまでの時間が伸びてきて、やがて2~3回起きると再び眠れる気がしなくなり、3時に完全起床、2時の起床と繰り上がって、先々週などはついに午前1時起き。翌日が午前0時起き、つまり3時間睡眠から2時間睡眠となって、さすがに眠いなあと思いながら運転していたら突然警報音が鳴って、見ると車線を逸れて対向車が正面からこちらに迫って来ていたりしました(もちろんそう見えただけで逸れたのは私の方)。もう少しでぶつかるところです。
高齢ですから死ぬのはかまいませんが他人に迷惑はかけたくない。それにいつも申し上げている通り、がんか何かでしっかり死出の準備をしてから死ぬのはかまいませんが、突然死は後ろ暗いことが多すぎてできないのです。
そこでChatGPTに夜中に何度も目を覚ます原因を聞くと、
- ストレスや不安
- 寝室の環境の悪さ。騒音や明るさ温度変化などが睡眠に不向き。
- 夜遅くの過度の食事や飲酒。
- 睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群や不眠症)
- 身体的な不快感(痛みやかゆみ、尿意、咳など)
- 生活習慣(不規則な生活の定着)
などを挙げてきます。そこで妻の「あなた、息していないわよ」を思い出したのです。
息苦しくて目を覚ます、それも何回も息が止まったあとの目覚めなので体が起きる態勢になっていて、かえって目覚めがいい、そんなことなのかもしれないと思ったのでした。
(この稿、続く)