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「私立さくら保育園、児童虐待の16の大罪」~子どもの心にどんな小さな傷も与えてはいけない①

 静岡県裾野市の私立保育園で、保育士による大きな虐待事件があった。
 ところが私にはその重大さが理解できないのだ。
 事例のほとんどは、私が自らの子にしてきたことと同じだ。
 現代の保育・教育の場には、昭和の常識がまったく通らない部分がある。
 という話。(写真:フォトAC)

【さくら保育園、児童虐待の16の大罪】 

 静岡県裾野市の私立保育園で起きた園児虐待事件、新たな証言も出なくなり、容疑者3人が逮捕されて報道もひと段落したみたいです。

 事件そのものは裾野市の私立さくら保育園において、6月から8月にかけて三人の保育士が1歳児クラスで虐待を重ねていたというもので、11月29日付静岡新聞朝刊に記事が載ると翌日には静岡県警が捜査に着手。わずか五日後には三人の家を家宅捜索の上、逮捕に踏み切ったというものです。
 
 虐待の内容は園の発表によると、
「ロッカーに入って泣いている園児を携帯電話で撮影」
「頭をバインダーでたたく」
「足をつかんで宙づりにする」
「腕を引っ張り『遅い』と怒鳴る」
「寝かしつけた園児に『ご臨終です』と発言」
「額をたたき、無理やり泣かせようとする」
「昼食時に怒鳴りつけ、頬をつねる」
「にらみつけて、ズボンを無理やり下ろす」
「宙づりにした後、真っ暗な排泄室に放置」
「『ブス』『デブ』と容姿をばかにする」
手足口病の症状のある園児の尻をほかの園児に触らせる」
「給食を食べない園児の頭をたたく」
「倉庫に閉じ込める」
「カッターナイフを見せて脅す」
「丸めたござで頭をたたく」
「撮影した写真に不適切なコメントを記しグループに配信」
(以上16項目)
といったもので、ニュースバラエティではMCやコメンテータによって「凄惨な」「信じられない」「人間としてあるまじき」といった言葉とともに紹介されました。

 もちろん市や県への報告書はもっと丁寧で、11月30日に開かれた保護者説明会ではさらに具体的な説明がなされたと思いますが、マスコミ報道しか情報のない私からすると、どうしてこれが逮捕されるほどのことなのか、三保育士が名前も顔写真も曝され一瞬で社会的制裁を受けなければならないことなのか、よく分からないのです。
 こうした事件に際してはまず弱者の側に立ってものを考え、弱者を擁護する方向でものを言うべきとは分かっているのですが、どうにも理解できない――。

【それは私が行ってきたこと】

 もちろん「給食を食べない園児の頭をたたく」や「倉庫に閉じ込める」が虐待なのは分かります。しかし「額をたたき、無理やり泣かせようとする」とか「にらみつけて、ズボンを無理やり下ろす」とかは、そもそもどういった状況なのか、風景そのものが浮かんできません。
 一歳児なんて泣かせたら面倒じゃないですか。ズボンを下ろしたら誰かが上げなくてはなりません。にらみつけたのが虐待だとしたら、私たちは1歳児をどう扱ったらよいのでしょう。
 まさか口できちんと説明すればわかるというものでもないでしょう。ちゃんとした親なら叱るときは厳しい表情と強い口調で行うものです。へらへらと笑いながら叱っても4歳以下児には何も通って行きません。
手足口病の症状のある園児の尻をほかの園児に触らせる」も何だったのか、私には全く想像がつかないのです。
 
 この虐待内容に違和感を持つことには、もう一つ理由があります。それはその大半が私自身の経験、シーナとアキュラという二人の子を育ててきた経験と重なってしまうからです。
 泣いている子どもを撮影、ハイしました。足を掴んで宙づりに、ハイこれもしました。腕を引っ張って「遅い」と怒鳴る、そういうこともあったでしょう。「ひどいデブですねえ」くらいは言ったかもしれません。
 小さな子は明らかに疲れていてすぐにも眠りそうなのに、なぜかむずかって泣きわめくことがあります。親は十分に承知ですからそのままベッドに連れていき、とんとんと背中をたたいて寝かせつける。すると思った通りストンと眠りに陥ることがよくあるのです。やがて私はベッドを離れ、静かにドアを閉めると妻に報告します。
「ご臨終でした」
 そんなことが何十遍あったことか――。「瞬殺だった」とまるで殺したかのような表現をしたこともあります。
 それを虐待だとか逮捕だとか、ニュースに顔写真付きで名前が出るとか――、そんなことではとてもではありませんが親などやっていられません。

【事件は日本の保育を根本から変えるかもしれない】

 親ならいいがよそ様の子どもを預かる保育園ではダメだという論理はいちおう成り立つところです。しかしそれでもなお、親に許されることを保育士がやったら逮捕という落差は受け入れられるものではありません。

 警察が逮捕に踏み切ったくらいですから、もしかしたら園が公表しマスメディアが検証もせずに扱った「16の大罪」とは全く異なる、深刻な虐待事例をいくつも掴んでいるのかもしれません。マスメディアが一呼吸おいた今、私も事実関係が明らかになるのを待ち、これ以上事件を具体的に語ることはやめましょう。しかしその影響については、もうしばらく考えを詰めたいと思います。

 裾野市さくら保育園における虐待事件は、今後の保育の現場に重大な変化を与える可能性があります。全国の保育士たちが事件報道に接して震え上がったに違いないからです。
 お客様は神様ですから我が子と同様に扱ってはいけません。保育士は長い目で見れば子どもの成長に責任を取らなくて済みますから、いくらでも甘やかしていいのです。危険回避のためであっても、子どもをにらみつけたり怒鳴ったり、危険な物品(カッターなど)を見せて指導したりするのは、やってはいけないのです。
 
(この稿、続く)