カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「弱者に寄り添いすぎると弱者を守れない」~韓国は大丈夫か3 

 あまりにも無垢で純粋な正義は 政治を踏みつぶす
 手のつけられなくなった日韓関係
 トンチンカンな外交と内政
 それなのに支持率の上がる 韓国はほんとうに大丈夫なのだろうか

というお話。

f:id:kite-cafe:20190709082553j:plain(「ソウルの夜景」phtoAC

 

【驚くべきべき反応の鈍さ】

 日本政府の輸出規制強化について、昨日(8日)になってようやく文大統領は、
「日本側の措置撤回と両国間の誠意ある協議を求める」
と述べたようです。

 韓国の革新系(文政権寄り)の新聞「ハンギョレ」は政府の動きをそのまま映す鏡のような紙面ですが、日本の輸出規制に関する産経新聞のスクープが出た翌日の一面トップは「文大統領『朝米の敵対関係は事実上終息』」で、社説は「朝鮮半島平和の道標立てた板門店の南北米首脳」と大きく謳っていました。他の目ぼしい記事は「世界を荒らした“サムスンの反労働”、法の審判台に」等、大企業を叩くもので、日本の輸出規制についてはまったく触れていません。

 そんな記事が1日~4日まで続き、輸出規制が実施された翌日(5日)になってようやく「ホン副首相『日本の輸出規制に対する相応措置を検討』」と輸出規制関係の記事が出ます。
 さらに夜になって、「“日本の輸出規制”に民官対応チームが発足…大統領府『特使派遣は時期尚早』」が追加されますが、その中に次のような表現がありました。

 大統領府の主要な関係者は5日、「日本の輸出規制に関しては昨日、経済副首相と国家安全保障会議レベルの対応があった。業界の困難な点と、それに相応する対応策をどのように作るべきか、具体的に議論している」として「今は特使の派遣を論じたりする段階ではないと考える」と一線を引いた。また「日本政府の輸出規制に対する文大統領の指示は(まだ)ない」と付け加えた。
 文大統領が直接出てこないことに関して、大統領府の高位関係者は「今、文大統領があえて出る理由がない。首脳として品格を守らなければならない」と説明した。


 しばらく前、日本の安倍総理トランプ大統領ノーベル賞推薦状を書いたことを本人にばらされしまい、マスコミからは「世界に恥をさらした」などと叩かれましたが、見えないところなら国益のために大統領の靴を舐めたってかまわないと私は思います(なんでも喋ってしまうトランプ相手で危険極まりないのは事実ですが)。

 首脳としての品位のために国益が損なわれるようではたまったものではありません。それに、今、文大統領があえて出る理由がないは、南北和平をトップダウンで決めたがる韓国政府の言い分とも思えません。

 今こそ出るべき時なのにそれでも出て来ないというのは、文在寅大統領も韓国政府も何を考えているのでしょう。

 

【弱者に寄り添いすぎると弱者を守れない。正義だけだと空手形になる】

 私は基本的に、ここまで日韓関係を荒らしてしまった文在寅政権が、いまさらやれることを思いつかなかったからではないかと思っています。昨日お話した、「生徒との人間関係やクラスの雰囲気を育てて来なかった私には、いざという時にできることがない」のと同じです。

 文大統領は元慰安婦や徴用工と呼ばれる人たちの社会的弱者の無念に寄り添いたかっただけなのです。
 おばあさんたちの意見を十分にきかなかった慰安婦合意は間違っている、日本側が十分な補償とお詫びをしてこなかった徴用工問題は被害者側に立って解決されなければならない、その一心で後先考えずに支援してきた、それだけのことで、正義が穏やかに実現されないことにむしろ戸惑っているのかもしれません。

 (自分の)正義をきちんと訴えさえすれば必ず実現するという無垢、純粋さは一貫したもので、「腹案がある」とどこかで聞いたようなセリフを残して出かけた中国との「THAAD(サード)配備問題交渉」では唯々諾々と「三不一限」()を飲まされ、PM2・5問題では一喝されただけで引き下がっています。
*「米国のミサイル防衛体制に加わらない」「韓米日安保協力を三カ国軍事同盟に発展させない」「THAAD(サード)の追加配備を検討しない」「現有のTHAADの使用に関しては、中国の戦略的安全性の利益を損なわないよう制限を設ける」

 アメリカに対しては基地負担の増額をほとんど黙って受け入れ、ハノイ会談や板門店会談では振り回されっぱなしになっても不満を言わない。大切な行事をキャンセルしてまで出かけたトランプ大統領との会談は、わずか2分間で終了となり、何の成果も得られずに帰国しています。

 フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相とは、実質的に北朝鮮への制裁解除一点で交渉してあえなく敗れ、ロシアのプーチン大統領とは北朝鮮問題を話し合っただけで、特段何かの成果があったように聞こえてきません。

 
 

【度し難い情報不足】

 外交交渉のいちいちがトンチンカンで、今回も朝鮮日報によれば、
 日本メディアが半導体素材の輸出規制計画について相次いで報じると、韓国産業通商資源部(省に相当)はサムスン、SK、LGなどの役員を呼んで会議を行い「企業は日本に支社を持っているし、多くの情報も確保しているはずだ。事前に動向を把握できなかったのか」などと問い詰めたという。 (2019/07/04朝鮮日報社説)
ということですが、これが事実だとすると韓国政府には、マスコミレベル・企業レベルの情報すら入って来ないようになっているのかもしれません。

 確かにジャパンスクールと呼ばれる韓国外交部の対日外交の専門家は、慰安婦合意に関わった罪を問われて主要ポストから全員追放されてしまい、同じ轍を踏みたくない他の外交官たちは片っぱし駐日韓国大使館への赴任を忌避していますから、大使館の情報収集機能が極端に落ちているのは事実です。貿易問題に当たるべき経済公使も4カ月間も空席のままです。

 また、日本に詳しい人材は「親日派」「土着倭寇」と呼ばれてその言葉に耳を傾けようとする政府関係者もいませんから、政府の情報収集能力は「市井の新聞読み」以下なのかもしれません。

 
 

【韓国は大丈夫か】

 国内的には経済問題でガタガタです。

 労働者の最低賃金を引き上げたら低賃金労働者が働けなるになる、という社会構造が理解できなかったのかもしれません。

 外交では日本を蹴りアメリカとの間に距離を置き、中朝には疎んじられていますからできることがほとんどなくなっています。

 内憂外患・四面楚歌。それなのに支持率は今月52.・4%と、この7カ月間で最高の数値をたたき出しました(2019.07.04韓国中央日報)
 「韓国は大丈夫か?」と本気で心配になるのはそのためです。

                        (この稿、終了)