カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「情報の穴を埋める」~日韓問題を斜めから見る3観点①

 日韓葛藤は 底だと思っていた部分が割れて 二番底も割れ
 この先どこまで険悪になっていくか分からなくなってきた

 テレビの情報番組やネットニュースにいくら触れても
 闇はますます深まるばかり

 こんなとき私たちがしなくてはならないのは
 ニュースとして聞こえてこない部分を 自ら埋めていくことだ
というお話。

f:id:kite-cafe:20190828071620j:plain(「崇礼門(南大門)」phtoACより )

 

【日韓問題が難しい】

 学校に合わせてブログの夏休みを取っていたこの4週間、私が何に集中し、何に興味を持って過ごしていたかというと、大方の日本人がそうであるようにそれは日韓問題でした。

 毎日のようにニュースで扱われ、日々変化があり、変化に従って繰り返し“最悪”という修飾が陳腐になっていく――そこで感じるのは(誤解を恐れずに言えば)ダイナミックでスリリングで、まさに歴史の証言者となる場所のすぐそばにいる臨場感です。

 毎日が日曜日な私は日々かなりの量のネット記事を読み、テレビの情報番組にも目を通しています。しかし困ったことに、読めば読むほど、観れば観るほど、事態が分からなくなってきます。

 思いつくままに列挙すれば、例えばそれは、
「たかがホワイト国を外されたくらいで、なぜ韓国の人たちはあれほどまでに怒っているのか」
ということだったり、
「そもそも韓国の輸出管理に不備があるとかいうけど、それは何なのか。日本政府がはっきり言わないのはなぜなのか。韓国は何を直せばよかったのか」
とか、
「日本が『これは貿易管理の問題で徴用工問題とは関係ない』といっているのだから、韓国は乗っかって『根拠を示せ、善処する』と言い続ければよかったのに、なんで『報復だ』『報復だ』と問題を複雑にしてしまったのか」
「そもそも日本は『禁輸ではない』と言っているのだから、きちんとした手続きをすれば規制品が入ってくるかどうか見極めればいいのに、どうして事前にこれほど大騒ぎをしなくてはならないのか」
「GSOMIAがなくなっても、日本はほんとうに困らないのか。北朝鮮アメリカが戦闘状態に入って、日本にミサイルがバンバン飛んできても大丈夫なのか」
とか、疑問はいくらでも浮かんできます。

 しかしここにきてようやくわかってきたのは、私のようなかなり熱心なウォッチャーをしても、集められる情報はあまりにも少ないということです。特に韓国側のことはさっぱり分からない。
 
 

【韓国の情報が入って来ない】

 私が収集できる韓国の情報源は、
 ①ウェブ版を含む日本の新聞および雑誌。
 ②ニュース・報道番組を中心とする日本のテレビ番組。
 ③ネット上で読める韓国の新聞。
 以上です。

 この中で③については革新系の「ハンギョレ」保守系「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」「聯合ニュース」の5紙(いずれも日本語版)。
 毎日確実に目を通していますから見方によってはけっこうな量ということもできます。5紙も読めばたいていのことは分かる――そう考えたくもなります。しかしまったく違います。

 日本語版の5紙はいずれも日本人の読者を予定していますから、すでにフィルターがかかっているのです。記事のタイトルを変えたり表現をいじったり――それどころかそもそも日本人には必要ない天気予報や台風情報、イベント情報などはかけらもなく、交通事故や殺人事件・火災といったものはかなり特殊でないと記事として上ってきません(それなのにやはり需要があるのでしょう、韓流芸能界のニュースを取るのはいたって簡単です)。

 つまりいくら韓国紙とはいえ、日本語版を見ている限りで、必要な情報はまったく足りないのです。

 例えば今日、韓国の朝刊各紙の一面を飾っているのは、間違いなく文大統領の側近のスキャンダルに司直の手が入ったという記事です。日本では韓国のホワイト国除外が今日から実施されるというのに、です。韓国国民の本日の主たる関心は、私たちとはまったく別のところにあります。

 しかしその韓国国民の最大の関心事――文大統領の側近で次期法務部長官として指名されているチョ・グクとかいう人のスキャンダ――は、先週土曜日の現地朝刊で、前日発表された「GSOMIA破棄」よりも大きく扱われていたことで、ようやく日本でも報道する価値ある大問題だと気づかされたものです。それまで日本のメディアはほとんど扱っってきませんでした。

 あるいはこれとは別に、最近、急に扱われるようになったものとして、反文政権デモも上げられます。
 これは8月15日の光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)に数十万人規模で行われたの機に注目されるようになり、先週土曜日に行われた自由韓国党の集会にも数万人が集まってGSOMIA破棄を批判したことで一躍き脚光を浴びるようになりましたが、文政権反対デモ自体は昨日今日始まったものではありません。(私の知る限りでは)すでに三月にはすでに大きく盛り上がっていたのです。しかしそれは日本のメディアでは報道されない。
 
 

【韓国も日本で起こっていることを知らない】

 同様に韓国の人たちも日本を知らない。
 慰安婦合意の破棄がどれほど日本人を怒らせたか、その実像が伝わらない。徴用工問題で韓国最高裁の判決が出て以降、繰り返し請求したにもかかわらず8カ月に渡って待たされ、ようやく出てきた解決案が、かつて韓国政府ですら一蹴したお粗末なものだったという苛立ち、それも伝わっていません。
 なぜか。

 いうまでもなくそれも、韓国の人たちが国内メディアを通してしか日本を知ることができないからです。

 今回の輸出規制にしても、日本としては、議長国だったG20が無事終わるのを待って、ようやく下ろしたのが3品目輸出優遇除外の鉄槌なのです。しかし韓国にはそうは見えない。

 G20が終わった翌日、電撃的な第3回米朝会談で和平の機運が一気に高まった翌日、まるですべてをぶち壊すように背後から突いた卑怯な一手が、日本の輸出優遇除外だったのです。だから怒る。
 
 

【情報の穴を埋める】

 私たちはマスメディアを通して現状を知るしか方法がありません。しかしそのメディアが、バランスの良い、先を見越した報道をしないとしたら――その空白は私たちが埋めるしかありません。
 もちろん直接取材という訳にはいきませんから、手持ちの情報を使うだけです。

 ジグソーパズルの欠けたピースを類推するように、現在手元にあるピースをよく吟味し、空白にあるはずのものを思い浮かべ、あるいはそこにあってはならないもののきちんと計算に入れて、全体像をつかむのです。

 日韓葛藤をどう解決するかは、東アジアの未来を全く違ったものにしてしまうかもしれません。
 その未来を担う子どもたちのために、私たちのできることが何なのかも、見越しておかなくてはならないでしょう。