「ワンダー・ワールド」~世界が分からなくなった

 文在寅大統領やドナルド・トランプ大統領の支持率は
 なぜ下がり切らないのだろう
 今の状況は 私の学んできたことに あまりにも反する
 少し立ち止まって考えてみることにした

というお話

f:id:kite-cafe:20190514080014j:plainエドワード・ジョン・ポインター 「シバ女王のソロモン王訪問」)

 

【何をやっても支持される大統領】

 私は大学で政治学を学びました。
 だからひとよりは少しだけ政治に興味が深く、多少詳しいという意味です。そして古い政治学に毒されているという言い方もできます。
 古いのでもう通用しない面も多いと思うのですが、それにしても今日の国際政治は分かりにくい。

 例えばこんな大統領がいるとしましょう。
 その政策別評価は、「経済政策」が肯定23%(否定62%)、「公職人事」が肯定26%(否定50%)、「雇用労働政策」は肯定29%(否定54%)。かつて肯定的評価の高かった「外交政策」は74%から45%へ急低下。目玉政策支持も83%から45%へ。
 さて、この大統領の総合的な支持率は?

 まあ惨憺たるものと思いきや、これが45%もあるのです。
 韓国の文大統領、目玉政策と言うのは対北朝鮮政策のことです。

 かつては84%もあったのですから半分近くに下がったわけですが、それでも2年目の大統領としては歴代で二番目の高い数字だそうです。支持率45%をなかなか越えられない安倍首相よりも、いつも良い数字です(最新データでは安倍首相は47%)。
 私にはそれが理解できない。

 あれもダメ、これもダメ、けれど全体としては「まあいいか」「これで行こう」という感じになるのです。なぜか。
 そう言えば朴槿恵前大統領も、最後の数カ月を除けばいくら失政を繰り返しても40%を割ることはありませんでした。鉄壁の支持者がいたわけです。
 
 
 

【背反する理念を持つ人々からさえ支持される大統領】

 分からないといえば、ドナルド・トランプと言うアメリカの大統領も分からない。

 3年前の選挙で主として中南部の貧しい白人たちの支持を受けて当選したわけですが、アメリカのプア・ホワイトたちは、なぜあんな大金持ちを自分の味方だと信じることができたのでしょう。この件は最初から疑問でした。

 父親から財産を受け継いだだけの傲慢なお坊ちゃま、次々と美人を女房にして放蕩三昧。自分の持ちビルに「トランプタワー」と名付けて恥じない厚顔。コメディアンもしていましたから多少奇抜で面白いかもしれませんが、気分のいい男ではありません。同じ白人として嫉妬や揶揄の対象にはなりえても、仲間と見做すのは気分のいいことではない、――それが当たり前だとおもったのですが、そうはなりませんでした。

 選挙運動期間中、次々と女性スキャンダルが出てきて、これで女性票は遠のくと思ったのにそうはならなかった、これにも驚かされました。
 女性スキャンダルと言えば、副大統領のペンスさんはアメリカ3億2800万人の中で最もスキャンダルと縁の遠い人です。何しろ夫人以外の女性とは食事をともにすることもなく、選挙や仕事のスタッフも女性だと早く帰宅させてしまうほどですから。
 そのペンスが破廉恥トランプの右腕なのです。

 トランプという人は不信心・不道徳を絵にかいたような人なのですが、ペンス副大統領も属するアメリカでもっとも敬虔なキリスト教徒「福音派」がこれを支持しています。イスラエルの首都をエルサレムと認めるなど福音派よりの政策を実行するからでしょうが、そうなると、
福音派は神のためなら悪魔とも手を結ぶ」
と言うことになりかねません。それでいいのでしょうか?

 元に戻って、トランプの法人税減税や公的資金抑制はプア・ホワイトの生活に重大な危機をもたらしています。貧しい白人の年金は減り公共の学校・病院・高齢者施設は予算を減らされました。その上に公約通りオバマケアが見直されたりすると彼らは病院にも行けません。
 それなのにトランプは支持されているのです。なぜでしょう?

 そんなことは昔の政治学は教えてくれませんでした。
 
 

【ワンダー・ワールドを読み解く】

 これはもしかしたら世界で、政治のやり方や選挙のあり方が変わってきたからではないのかと、最近思い始めました。

 かつて政治家は自分の地盤を押さえた上で、どれだけ多くの浮動票を獲得するか、中間層を取り込むか、さらには相手の支持基盤をどれだけ切り崩すか、ということを問題にしたのに、現在は自分の支持基盤は一票も取り落とさない、そうすればあとはなんとかなると考えているようなのです。

 奇しくもトランプ大統領の支持率は40%弱から45%強です。文大統領の支持率も45%前後、そして安倍首相も直接選挙ではありませんが40%弱から45%強と言ったところです。つまり国民の4割少々が確実に支持してくれるなら、国家元首は勤まるということです。その4割のためだけに働けばいい。

 分かり易いところでトランプ大統領についてみれば、どんなにふしだらで女性差別的であっても、一部の女性は「私にセクハラをしなければいい」「私が被害者でなければいい」「何らかの利益を与えてくれればいい」と、そう考えているのです。

 トランプが不信心・不道徳であることは、福音派にとって少しも困ることではありません。しかしイスラエルに肩入れをしてエルサレムを首都と認め大使館を移転してくれることは、大きな利益です。

 貧しい白人にとって、トランプの政策がもたらす負の効果(貧困のさらなる進展、年金の減少、医療費時の上昇など)はすぐに実感できるものではありません。しかし移民から白人を守り、何があっても銃を取り上げない頼もしい大統領と言う面は、実に見やすいのです。

 韓国の事情はよく分かりませんが、朴槿恵前大統領をギリギリまで支えた40%の保守派(韓国南東部・慶尚道を支持基盤とする人々)の反対側に位置する人々、南南葛藤のもう一方の当事者、つまり進歩派と呼ばれる(韓国南西部・全羅道を支持基盤とする)人達は、「今はうまく行っていないかもしれないが進歩派大統領は必ず自分たちのために成果を出してくれる」「どんなにうまく行かなくても朴槿恵のような保守派に政権を戻すよりはマシ」と考えて頑張っているとしか考えようがないのです。
 
 

【日本のゆくえ】

 日本も米韓と同じように一強多弱ですが印象はずいぶん異なり、「何が何でも安倍」も「安倍だけは勘弁」も双方とも少ないような気がします。それでも「一強」になってしまうのは、やはり政治に大きな争点がなく、国民は「現状におおむね満足」しているからでしょう。経済がうまく行っているときは、人はあまり文句を言わないのです。

 また、かつての民主党政権に対する深い失望と恐怖がありますから、多少のことでは自民党を見限って野党に肩入れしようという気にはなれないのです。

 ただし昨日のニュースにもあった通り、いよいよ景気も下降局面。そろそろ日本にも大いなる分断のときが来るのかもしれません。そうであっても米韓のような極端な右傾・左傾にならないよう見守っていきたいものです。