カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「トランプ・ヤクザ」

 明後日、安倍=トランプ会談が開かれ、そのあとエアフォースワンでフロリダにあるトランプ氏の別荘に移りゴルフをするとか。
 その件で政界も財界もマスメディアも疑心暗鬼。尋常でない厚遇のあとで何か刃物が突きつけられるのではないかと心配されています。
 安倍はよほど大きなお土産を用意しなければならないのではないかとか、そもそも今はまだ様子を見る時期、安易に懐に入るなとか、やかましい限りです。
 

【不動産業はやくざ稼業なのか?】

 その“トランプ氏の別荘”というのは元高級ホテルで、売りに出された際、トランプは隣りの(ビーチ側の)土地を別の所有者から買い上げ、「安く売らなければ土地に壁を建ててホテルから海が見えないようにする」と脅して値段を四分の一にまで下げさせた自慢の建物だそうです。

 私はその逸話にも驚きしまたが、それを紹介した番組でコメンテーターが、
「それはビジネスマンとしては正しいやり方かもしれないけど、政治の世界に持ち込まれたらかなわないなあ」
とか言ったのにも驚きました。

 私は一族そろっての公務員なので分からないのですが、これがビジネスマンとして正しいやり方なら社会は修羅場です。公務員で本当に良かった――。

 しかしそれにしても私の記憶だと、これは30年近く以前のバブルのころ、よく似たやり方があってその人たちは「不動産屋」ではなく「地上げ屋」と呼ばれていました。さらに彼らの本業はほとんどヤクザ屋さんだったような気もしますがいかがでしょう。
 それが今や不動産業の“正しいやり方=ビジネス”になってしまったとしたら怖ろしいことです。
(不動産屋さん、間違っていたらゴメンナサイ)

【安倍首相は子分だと思われている】

 ところで政界・財界・マスメディアが疑心暗鬼になっている前述の件、私は少しも心配していません。
 相手を厚遇していい気にさせ、そのあとで刃物を突き付けるようなやり方はまるっきりトランプ的ではないからです。さっきのビーチの壁の話のように、彼は先に「刃物を突き付け」、それからじっくり考えさせる人間です(しかしトランプ、“壁”が好きだなあ)。「トランプ自伝」にも「とにかく強気で押せ」と書いてあります。

 安倍総理一人がこれほどの厚遇を受けるのはそんな権謀術数ではなく、ひとえに総理が大統領当選直後におっとり刀でかけつけたからです。何を置いても真っ先に、といった感じで急いでやって来て恭順の意を示した(と、トランプ大統領が思っている)から嬉しくてしょうがないのです。

 さらに安倍首相を厚遇することで、世界に「オレに可愛がられるとこんないい思いができるということを見せてやる!!(オーストラリアのターンブル首相みたいに嫌なことを言うやつは電話もガチャ切りだが)」と、そんな気持ちでいるに違いありません。

 昔私が付き合っていた“番長”と呼ばれるチンピラ中高学生はみんなそうでした。ヤクザのおっちゃんも同じですよね?
 身内には本当に親切にする、優しくする、面倒見がいい、しかし敵に対しては容赦ない――。(*)
 彼は人間関係を力関係としか見ていないのです。

【しかし安倍総理だってただ者ではない】

 ただしトランプが見込み違いをしているのは、安倍総理がそんなに人のいい政治家ではないということです(民進党の辻元清美議員よりはいいのかもしれませんが)。
 G8中でも最も首脳経験の長いひとりです。素人のトランプに振り回されて終わりなんてことはありえません。

 たっぷり資金を用意してカリフォルニアやテキサスのインフラ整備につぎ込み、アメリカ人の雇用を増やすと同時に日本の新幹線を送り込めばいいのです。線路なんて一度敷いたらあとは伸ばすだけですから、100年くらいは買い続けてもらえるかもしれません。

 それが無理でも、あるいは逆にとんでもない要求を吹っ掛けられたとしても、それだって大したことはないでしょう。
 どんな約束をさせられたって1〜2年のらりくらりとやっていれば(普通にやっても大きなプロジェクトだとそのくらいかかってしまいますが)、その間にトランプ政権は潰れるに決まっていますから。

(*)「トランプ氏…有能なビジネスマンって本当? 実像を探る」(2017.01.09 朝日新聞デジタル)より

  乱暴な人間にみえますが、彼を慕って近づいてくる人に対しては悪いようにしません。私は独立して自分の会社をつくりましたが、とことん事業の教えを請いました。トランプ氏は「私が事業で得た知識を、どれだけでも吸収してくれ」と言ってくれ、本当に多くのことを学びました。
 一方で、ビジネスで利害が対立した人たちが、トランプ氏をうかつに攻撃すると激しい反撃を受けていました。『倍返し』といえる厳しい仕返しでした。このため、多くの敵をつくったわけですが、トランプ氏は意に介していませんでした。その態度は、大統領選でも同じだったと思います。