「お世話になりました」〜2016年、私の過ごし方

【仕事のために家庭を犠牲にしない世代】

 私たちより上の、団塊の世代よりさらに上は、仕事のためにいかに家庭を犠牲にしたかが自慢になるような人々でした。教員の世界ももちろん、

「運動会なんて何十回やったか分からないが、自分の子どもの運動会には一度も言ったことがない」

とか、

「子どもの担任の名前を、ついに知らないまま終わった」

とかが堂々と語られ、家族のために休みを取るなどとんでもないことだと信じられていたのです。

 ところがちょうど私が教員になったころから、不登校家庭内暴力が教育問題として沸き上がってきて、それがけっこう教員一家にも見られるようになってきたのです。

「○○先生のところのお子さん、最近学校に行っていないみたい」

「△△先生の奥さん、また警察に呼ばれたらしい・・・」

 そうした噂はいわば、

「オマエ ガ 仕事二 カマケテ イルト 家デ 大変ナコト ガ 起コルゾ」

と脅迫されているようなもので、その声を私は聞いたのです。

 自分の子どもが学校に行かなかったり家庭で暴れていたり、あるいは非行に走っている状態で他人のお子様への指導もへったくれもありません。どんなに素晴らしいことを語っても保護者や生徒の目は「だけど先生、自分の子ども指導すらできないじゃん」と言っているように見える――そう見えただけで指導の矛先も鈍ろうというものです。

【社会と家庭、あわせて100点】

 ですから私は家庭人としての仕事にも非常にエネルギーを注ぎました。私、以降の先生方にも、そういう人は多かったように思います。学校のために家庭を犠牲にすると、それが仕事に差し支えることが少なくないと、わかってきたからです。

 そして私は自分の子どもも含め、若い先生方や生徒には、いつもこんな話をしてきたのです。

「私たちはね、社会人として50点、家庭人として50点、合わせて100点で満点になる人生を生きているようなものなんだ。社会人として完ぺきな生き方をしても、家庭がダメならその人の人生は50点でしかない、どんなに家庭を大事にしてもそれだけでは50点を越える人生は送れないということだ。

 私は教員として最高の仕事を成し遂げたわけではない。けれどもちろんそれなりに頑張りもしたから自分で自分に7割の評価を上げよう。

 家庭人としてもよく努力してきたからこちらも7割、つまりそれぞれ35点ずつ与えて合わせて70点の人生、そういうことになる、――70点の人生、悪くないだろ? 仕事ばかりにかまけていても家庭にばかり集中していても取ることのできない数字だ」

【家の中は意外と大変だった】

 この4月に、公的な仕事の一切をやめて、私はひたすら家庭人として私事だけに専念してきました。

 以来どうやって過ごしてきたかというと、朝から家事の大部分をし(妻がまだ正規の教員ですので忙しい)、89歳の母の面倒を見、娘や息子のことを気にかけ、畑を耕し、本を読み、サイトやブログを更新し、家の片づけをする、それがこの9か月余りにしてきたことのすべてです。それだけでとんでもなく忙しかった!!

 特に室内の片付けというのは、その際限のなさに呆れるばかりです。

 履きもしないズボンが数十本(そのうち三分の一は独身時代のもの)、かけたままのネクタイも数十本、防寒着は10点近く出てきました(全部重ね着したら雪ダルマだ)。

 書籍の整理は諦めるにしても、読みもしない教育雑誌のバックナンバーが数百冊。渡り歩いてきた学校の学校要覧、研究のまとめ、修学旅行などの各種旅行記・文集。

 

 カセットテープ数百本(カーステレオに使っていた音楽テープはまだしも、研究会の記録だの講演会のテープなど、なぜ捨ててこなかったのか)。

 写真スライドは数百枚。これなどすでに投影機が存在しません(「写真スライド」と言っても若い人は何のことかわからないでしょう)。

 その他、CD、DVD、フロッピーディスク(5インチFDなんて見たことないダロ?!)。

 家のあちこちに散らばって置いてあった文房具(ハサミだけで12本、カッターは各種8本もあった。その他、消しゴム、ボールペン、マジック、サインペン、ゼムクリップ、定規・・・)。

 信じがたいことに謄写版用のガリ版と鉄筆(「謄写版」「ガリ版」「鉄筆」が何のことかわからない人も多いと思うけど)等々々・・・。

 なにが「家庭人として7割」か。いつのまにか家が雑然とした倉庫と化していて、それに気づかなかっただけじゃないか! 何もしてない!

 畑だって鉢植えの植物だって、今年になって知ったことも山ほどあるじゃないか!

【来年もよろしくお願いします】

 かくて周囲からは「悠々自適」などとからかわれながら、しかし内実は以前よりもずっと忙しく悪戦苦闘の日々を過ごしてきたのです。

 2016年、それにしても悪くない年でした。

*学校の年末年始休業に合わせて明日からしばらくお休みします。

 新年のあいさつを除いて、次回の更新は1月8日(月)1月10日(火)を予定しています。それでは皆様、良いお年を!!