「部活顧問の授業レベルは低いのか?」〜小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割が「過労死ライン」②

 部活顧問といえど放課後までは学級担任であり同時に社会科や数学といった教科を教える教科担任です。そこで過剰な部活動が教科指導に影響を与えるのではないかといった問題が出てきます。しかし部活動があるから十分な教材研究ができない、授業のレベルが下がるというのは必ずしも当たっていないように私は思うのです。

 部活動があってもなくても、十分な教材研究のできる時間などもともと確保できないからです。それは小学校の教員でも「約3割が『過労死ライン』」という事実からも分かります。中学校から部活がなくなってもせいぜいが小学校教員並みに“楽”になるだけです(「過労死ライン」3割が“楽”かどうかは別として)。小学校の先生だって十分な教材研究の時間などありません。

 また、先週金曜日の「スッキリ!!」に出演しておられた二人の先生、部活顧問を断って指導をしなくなってからどれだけ教材研究の時間が増えたかというと、実は全く増えていない、むしろ減っているように見えます(写真)。部活で浮いた時間がそのまま教材研究に当てられるわけではないのです。

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 それでは「部活のために十分な教材研究ができない」というのは部活顧問の単なる言い訳で、そのぶん早く家に帰って遊んでいるのかというとそれも違います。普通の教員には持ち帰り仕事というものがあるからです。
 一般的な会社員とは違って教員の主たる業務(学級指導や教科指導)はチームプレーではないのでいくらでも持ち帰りができるのです。子育てや介護といった事情で早く帰宅しなければならない先生方は、普通ごそっと仕事を持ち帰ります。
 かく言う私も子育ての真っ最中は部活が終わるとまっしぐらで家に帰ったので、写真のような帯グラフをつくると「授業準備など」はゼロになってしまいます。しかし実際に何もしなかったわけではなく、食事や入浴を済ませると子どもを寝かせつけながら自分も寝てしまい、3時ごろに起きて教材研究やら校務・教務、部活のメニュー作りなどをしたものです。

 そうやって教員は授業の質を必死に確保しています。もちろん個人の力量によって授業には差があるものの、いい加減に済ませる人はいません。特に中学校の先生方は絶対に手を抜かない――それは私が保証します。

 

【なぜ保証できるのか】

 中学校の教員は授業についても学級経営でも絶対手を抜かない、能力の限界まで頑張る――。なぜそんなそんなことを保証ができるのかというと、そのくらい中学生というのは難しいからです。理解できないいい加減な授業に、黙ってついて来てくれるほど彼らは優しくないのです。

 授業がダメだと優秀な子は机の下で内職を始めます。そうでない子のうち「比較的良い子」は居眠りをし、「普通の子」はおしゃべりをし、「悪い子」は暴れはじめます。そんな最中に校長や副校長が見回りに来てごらんなさい、目も当てられません。

 それが教科ではなく、学級経営の手抜きだとさらにとんでもないことになります。いい加減に扱って荒れたクラスは学級担任にとって地獄です。
 学業にも学級活動にも後ろ向きな子たちですから校内で問題ばかり起こします。授業は片端いい加減にしてしまい当番活動も委員会活動もしません。
 給食は修羅場で、食べ物が飛び交い、嫌いなものがバンバン捨てられます。それとは別に、教室があちこち壊されます。さらに問題は校外にまで広がり、万引き指導だの他校の生徒との喧嘩だの、深夜徘徊だの、朝から晩まで1年365日休む暇がなくなります。

 中学校の先生はそのことを身に染みて知っていますから、授業でも学級経営でも決して手を抜かないのです。私が保証できる、それが所以です。
 さらに言えば部活で成果を残すような人は、概して授業でも学級経営でも成果を出す先生だという印象が私にはあります。

 

【それでも過重な勤務からは解放されるべきだ】

 部活顧問を外しても浮いた時間がそのまま教材研究に当てられるわけではなく、そもそもどんな劣悪な状況でも教師は最高の準備をしてくれる、それは間違いありません。しかしだからといってこのままでいいはずはありません。彼らは休養と家庭サービスを犠牲にして子どものために尽くしてくれますが、その“犠牲にした休養や家庭サービス”が、直接的・間接的に学校教育にも影響を与えてくるからです。
 その意味で言えば、本当は休養を取ることも家庭を守ることも教師の務めなのです。

 中学校の最前線にいるとき、私がいつも考えていたのがそれです。
 特に生徒指導の場面で、頭がはっきりしていて瞬間的に反応できることが決定的に重要な場合が少なくないのです。
 例えば大勢の生徒いる場所で、激高した子どもに「ふざけんな、クソジジイ!」と言われたらその瞬間どう反応するか――すべき対応を誤ればのちのち大きな禍根を残すことがあります。
 生徒のウソを見抜くこと、子どもの苦しみや悲しみちょっとした反応に気づくこと、必要な時、必要なタイミングで決定的に効果のある言葉をかけること、そうしたことは疲れた目と頭ではできないことです、
 そう考えるとまさに「休むのも教師の仕事」で、私はたとえ5分の空き時間でも、動かないで済むときは目を閉じて体を休めるよう心がけました。

 日々の家庭サービスはさらに重要な要素かもしれません。
 数年後、あなたの子どもが超ド級の不良少年になっていたら、あなたは教師としてどのように生きていくのでしょう。毎日、警察に呼ばれるのではないかとドキドキしているようではそれだけで仕事に差し支えます。わが子の面倒をきちんと見るかどうかは将来のその子と、職業人としてのあなたの存在に関わる重大な問題です。
 家庭が円満であることは決定的な危機回避策です。特にわいせつにかかわる不祥事を起こす教員は、ほぼ確実に家庭内に問題を抱えているという事実を見逃してはいけません。

 

(この稿、続く)