「学校と避難所」c

 学校が避難所となったあとで体育館がいっぱいになり、教室の方にも人を入れさせてほしいと言われてそれで逡巡する校長先生がいたら、それは冷酷であり非道であり、同時にセンスの良い校長です。雑然とした体育館から優先的に教室に移されるのは、お年寄りか持病のある人。いつまでも教室で預かるつもりならいいのですが、いずれ「出て行ってくれ」と言わなければならないとしたら最初から肯うべきではないのです。開放するにしてもあらかじめ期限をきちんと申し渡しておかなくてはなりません。そうでないと動かない人は絶対に動きません。しかし学校はいつまでも休校にしておくわけにはいかないのです。

 学校はできる限り早く再開する必要があります。ひとつには授業を進めたい(そうしなければ指導を終了しないまま進級・卒業をさせなければならなくなる)という学校側の事情もありますが、主たる理由は保護者です。一日でも早く学校が再開し、日中だけでも子どもを預かってもらわないと親たちは活動できないのです。

 子どもが小学校の低学年だったりすると家の片づけさえ安心してできません。中高生でも被災地に残して両親が働きに行くというわけにはいかないでしょう。学校が始まらないと社会活動も十分に動き始めません。

 そうなると困るのが、学校は再開したいしかし校内には大量の避難民がいるという状況です。これをどうするのか――。

 思うに被災者を抱えたまま、翌日からでも学校を再開するというのはどうでしょう。もちろん校舎や通学路に危険のないことが前提ですし、学校避難が数か月に及ぶ場合と三日で終わる場合とでは条件は違いますが、どうせ家にいてもすることはほとんどないのです、着のみ着のままで学校に来て、一日中、特別活動(もしくは総合的な学習の時間の活動)をするのはどうでしょうということです。具体的には避難してきた人のお世話、小さな子どもの遊び相手です。

 そんなことが子どもにできるのか――もちろんできます。

 普通、学校には児童生徒会という非常に機能的な組織があって、毎日何らかの活動をしながら学校生活を支えています。学校での生活を支える組織ですから当然、学校に避難してきた地域の人たちを支えることもできます。

 具体的には給食委員会は避難所食事係を兼ね、食事の必要数やアレルギー食数を数えて配給する、必要ならおにぎりを握ったり味噌汁をつくったりもする。清掃委員会は避難所内の清掃及びゴミ処理係を兼ねて一日中校内を回る。保健委員会は保健衛生係(健康調査・統計資料作成、トイレ清掃及び消毒など)、体育委員会は体育運動係(一日数回の体操指導・レクリエーション)、学芸委員会は広報・新聞(壁新聞)・校内放送係、図書委員会が図書館および子ども係(大人への図書の斡旋、子どもへの読み聞かせ)等々。

 非常時に際して若者が想像以上によく働くことは阪神大震災でも東日本大震災でも実証済みです。高校生なら100%問題なく、中学生でも十分に、そして小学校の児童会だってそれなりに働きます。役割を与え方向を示せばいくらでも頑張るのです。

 災害なんてない方がいいに決まっています。しかし万が一遭遇してしまったら、そこに何かの意義や意味を見出すしかありません。

子どもたちが、

「自分には社会的役割があり、自分たちにはそれを果たすだけの力があり、そしてできる。社会から必要とされる社会の成員である」

 そうしたことを意識するのは、子どもにとっても社会にとっても重要です。

 災害が多くのものを奪っていく以上、その幾分かは取り戻さなくてはいけません。