カイト・カフェ

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「廃校になりそうな超小規模校を、オンラインの拠点にできないか」~不登校の子たちにオンライン学習を②

 放っておくと「オンライン学習」は忘れられる。
 通常の学校には必要のない学習方法だからだ。
 しかしそれを必要とする少数の子どもたちも大切にしたい。
 となると、
 問題は誰がオンラインの担い手になるかということだ。

というお話。f:id:kite-cafe:20200619071622j:plain(「田園」フォトACより)

【「オンライン学習」は進まない、しかし残すべきだ】

 オンライン学習は今後どのような進展を見せるのか――。

 いわゆるICT(情報技術)教育は一定の進展を見せると思いますが、インターネットを通して教師と児童生徒が繋がる「オンライン学習」はこれから先、さほど進展しないと思っています。
 なぜなら、「必要ないから」です。

 現在のコロナ事態は非常時でその非常時対応として「オンライン学習」が求められただけで、今の状況を脱したら何のための「オンライン学習」か分かりません。
 子どもたちは基本的に学校に行って友だちと一緒に勉強するのが楽しいのであって、それを留めて在宅で学習させる理由は、新たなパンデミックか戦争でもない限りありせん。
 ICT教育と「オンライン学習」は混同してはいけないのであって、それとこれとは別です。

 しかし今回のコロナ事態で明らかになったことのひとつ「不登校の子の学習権を保障するために『オンライン学習』は有効かもしれない」は捨て置けません。オンラインを契機に学校に来るようになった子がいると聞けばなおさらです。
 ぜひとも大切にしていかなくてはならないことですが、だからと言って現場の先生方に休校中と同じ水準の「オンライン学習」を続けろと言っても無理でしょう。いくら不登校の子どものためとはいえ、過剰労働が前提であることは長続きしません。希望を与えてハシゴを外すくらいなら最初からやらない方がマシです。

 ではどうしたらよいのか――。
 もちろん各校の教員を大幅に増やしてオンライン学習に従事させるか、いっそのことオンライン通信制小中学校でもつくってしまえばいいのですが、学校をつくれ、教員を増やせといった提案は通ったためしがありません。そこで現在、手元にある資源を用いて、なんとか不登校の子のための「オンライン教育」を残せないかと考えたとき、ふと思いついたのが島嶼やへき地、あるいはドーナツ化現象のために都市のど真ん中にポツンと生まれた超小規模校のことです。

 財政的はたいへんな負担で、今にも統廃合されかねないこうした小規模校を残して、そこの職員に「オンライン学習」を推し進めてもらうのです。
 

【学校がなくなると地域がなくなる】

 小中学校の統廃合が話題になるとき、常に聞こえてくるのは「学校がなくなると地域がなくなる」という心の叫びです。日ごろは意識していませんが、私たちは学校を通して地域の一員となり、学校を中心に生活をしてきたからです。

 結婚して新居を構え、しかしそれだけで地域に人間関係を持ち始める人は稀です。子どもが生まれ保育園に通い始め、やがて小学校に入学する――ほとんどの人はそこで初めて地域に関わる“役員”を経験し、“当番活動”を行うことで貢献し始めます。子どもと一緒に行う学校のボランティア活動を通して、地域に知己を多くつくり、社会関係の足場を築いていくのです。

 やがて子どもが成人して家を離れると、地域の他の子どもたちが精神的な支えになっていきます。公開参観日には孫がいるわけでもないに学校に呼ばれ、敬老の日には子どもたちが訪ねて来る――。登校する子どもたちの声を見送りながら朝の活動を始め、子どもたちに帰りのあいさつをされながら夕暮れの家に帰る――。
 学校がなくなるというのはそうしたことの一切を失うことです。

 学校のなくなった土地に子育て世代や、これから子どもを持とうとする人々は住めなくなります。そしてやがて、地域そのものがなくなってしまうわけです。

【財政的に負担が大きい学校に、仕事を与えることで均衡を生みだす】

 しかし一方、超がつくような小規模校が財政的にたいへんな負担になっていることも事実です。私はよく冗談に「校長先生ひとりの給料だけでもたいへんなものだよ」と言いますが、法律によって学校長のない学校というのは考えられないので、最低でも毎年それだけの金額が費やされるわけです。

 隣の島までヘリコプターで30分といった島嶼の学校は他に選択肢がないので残すしかありませんが、山の中だとか都市の中央で過疎化によって小規模になった学校は、やはりなくしていくしかないというのも分かります。
 どうしたものか--。

 そこに浮かんだのが、廃校にする代わりに「オンライン学習」の拠点校にするアイデアです。もちろん島嶼部の学校だってかまいませんが、ネット環境さえあれば地球上のどこにいたってできるのが「オンライン学習」なのですから。

 ただし統廃合が考えられるような小規模校は教職員も少ないわけで、その人たちに通常の校務とは別の、「オンライン学習」を受け持つだけの余裕があるかどうかは最優先で考えておかなくてはならないことです。

【小規模校の先生も驚くほど忙しい】

 担任するクラスの子どもが5人しかいないなら、仕事量は40人のクラスを持つ先生の8分の1です。成績処理や書類づくりでは圧倒的に楽です。しかし良くしたもので、小規模校の先生には小規模校なりの忙しさもあります。

 例えば学校の先生たちが授業以外に受け持つ係や委員会の仕事――教科の教具や教材の管理をする国語係・数学係といった教科係の仕事、学年会計や行事計画の立案・実施といった学年の仕事、PTAの仕事、部活動や児童生徒会の顧問、そうしたものは学校の規模の大小にかかわらずだいたい50個ほどあります。

 職員数50人の大規模校ならそれを一人一業務で割り振ればいいのですが、5人しかいない学校だと一人十業務にもなってしまいます。私も経験がありますが、肩書が主任ばかりで、年じゅう何らかの主任仕事に追われてけっこうしんどいのです。

 そのことも含めて、超小規模校が日常的には不登校生を対象とした「オンライン学習」の担い手になりうるか、そして今回の新型コロナ事態のような非常事態が起こったとき、地域のすべての「オンライン学習」の中心となりうるのか、来週から少し丁寧に考えてみたいと思います。

(この稿、続く)