ウサギを三羽も飼っています。別に好きだからではありません。
一羽は娘が独身時代、寂しいから買って欲しいと言われて与えたものですが、マンションを替わったら飼えなくなって私の元に来ました(もしかしたら今は夫となった男と付き合い始めたことも関係あるのかもしれません)。
名前がカフェというそのウサギを、妻が職場である学校に連れて行ったところ子どもにいじられてすっかりノイローゼになり、食事を摂らなくなってしまいました。幸い獣医にかかって一命は取り留めたものの困ったのは妻です。イベントの途中で主役のウサギがいなくなってしまったからです。
せめて丈夫なウサギをレンタルしてくれるところはないかとペットショップに相談したらそちらも渡りに船、 “クリスマスに売れ残ったウサギがそのまま半年もこちらにいるので、ゲージをつけてタダでいいから持って行ってくれないか”という話になったようです。しかも二羽。オスとメスの兄妹です。
ミルク(色の白っぽい兄)とココア(色の濃い妹)と名づけて、以来、我が家にいることになりました。
ウサギは大声で鳴いたりしませんし散歩の必要もありません(というか真っ直ぐ歩かないのでできない)。年中からだを舐めていて清潔ですから匂うということもない。フンは無臭で尿は甘ったるい匂いがしますがトイレシートに浸み込むとほとんど気になりません。体が小さいのでエサ代もさほどかかりません。ペットとしてはいいこと尽くめみたいですが、欠点もあって、頭が悪いのかしつけが悪いのか、なつくという感じがまったくないのです。猫のように人間を意識して敢て懐かない、気位が高い、というのではなく、とにかく分かっていないのです。
しかしそれでも三羽いると三様の個性があり、年長のカフェは赤ん坊のときから娘に育てられたためおとなしく、私が近づくと鼻をなぜてもらおうと顔を近づけてきたりします。ミルクとココアは尻をこちらに向けたままです。
トイレの交換などで扉を開くとカフェとミルクは同じですがココアだけは違います。この凶暴なおてんば娘はぱっと反転してこちらを向き、体を低くして攻撃態勢をとります。そしてウーウーとうなるのです。いつもそうです。なぜそうなのか分かりません。
昨日は朝、私が起きた時にはすでに、ココアのゲージ内はたいへんなことになっていました。トイレがひっくり返され、フンが散乱し、シートはびりびりに引きちぎられてたのです。おまけにちぎれたシートを口にくわえ、ひどい目つきでこちらを見ています。
以前にも同じようなことがありましたが、今回は何か異常です。しっかりと言い聞かせてシートを替えてあげたのですが2時間としないうちに同じことを繰り返して暴れます。
しかたがないのでココアだけ外に出し、畑の隅にリードで括り付けてしばらく遊ばせました。ちょうど仕事もあって小一時間、屋外にいなければならなかったのです。
ココアは精一杯走り回って野草を食べ、しばらくじっとしたり穴を掘ったりして遊んでいました。
勤務の時間が近づいたのでココアをゲージに戻します。すると様子を見ていたカフェとミルクが、
「ボクは?」「ボクは?」
という感じでゲージの檻に前脚をかけてガンガンひっかきます。
「ごめんね」
と私は言います。
「時間がないんだよ。もうすぐ出なくてはならないから」
それでも二羽は諦めず、
「ボクは?」「ボクは?」
と訴えます。
図らずも昔のこと、困った子どもをクールダウンさせるために少し譲歩したら他の子に同じ待遇を求められた、そんな経験を思い出しました。
ココアのように暴れたら利益が得られたという様子を見せられたら、(ウサギも人も)素直でいられるはずがありません。
エコヒイキは難しいものです。