カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「ウサギのミースケはトイレの場所も忘れてしまった」~死にゆく小さな者の記録①

 11歳になった我が家の飼いウサギのミースケ、
 老衰が急速に進んでいる。
 もはやトイレの位置も分からなくなり、
 自由に部屋を歩き回ることもできないのだ。
 という話。(写真:SuperT)

【三羽のウサギ】 

 ミースケ(本名:ミルク)という名の我が家のウサギについてお話しします。オスのミニウサギで、今年1月の当ブログ最初の記事で、「11歳の高齢で今も生き残り、いかにもペットらしい落ち着いた様子で家の中で暮らしています」と紹介したあの子です。

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 11年前の秋、ペットショップがクリスマスプレゼント用に繁殖させたのが売れ残ってしまい、妹ウサギとともに半年間も店頭に置かれていたのを、縁あって妻が無料でいただいてきたものです。当時、私の家には娘が東京で飼い続けることのできなくなったネザーランドドワーフのカフェがいたので、ほぼ同時に三羽を飼うことになりました。
 それが5年前にまずミースケの妹のココアが死に、

kite-cafe.hatenablog.com 続いて翌年ネザーランドのカフェが死んでミースケだけが残ったのです。

kite-cafe.hatenablog.com 三羽一緒にいたときはココアだけがメスなので他の二羽と一緒にすることができず、オスの二羽は中が悪いというか、身体の小さなカフェから突っかかって行ってすぐにミースケに押さえつけられて散々な目に会うというのが常でしたのでこれも一緒にできない。そこで順番を決めて、一羽ずつ20分間の外遊びをさせるようにしていました。
 しかしミースケ一羽が残ってしまうとそういう心配もありません。おまけにミースケはおっとりとしてお尻の始末もよく、乱暴なことも少ないので部屋の中に放し飼いできるのです。
 こうして以来2年数カ月、ミースケは我が家の部屋ウサギとなりました。

【ミースケの生活】

 年の初めにも書きましたが、ウサギという生き物は、見かけは可愛いですが「可愛げがある生き物」というわけではありません。懐くということがないからです。カフェはひとの手から逃げ続けるのが習いでしたし、ココアは逆にウーウーうなって今にも噛みついたり引っかいたりしかねない様子でした。ミースケ一羽がおとなしいというか諦めが早いというか、子どものころから手を伸ばしても抵抗することなく、触られるままになっているのが常でした。

 一羽残って家ウサギとなってからは、ややコミュニケーションめいたこともできるようになり、空の皿を舐める仕草で好物を要求したり、早朝、階下に降りてきた妻の後追いをしたり、あるいはだらしなく床に寝転がっている私の腕や足を突いて撫でてくれとせがんだりと、可愛いところを見せる場合もありました。ただし気まぐれで、来るかと思えば来ないこともしばしばでした。

 日中はカーテンと窓ガラスの間を住処と決めてじっとしているのが常で、お腹がすくとエサ場まで走ってきて食べるものを食べ、トイレを済ませるとまた元の場所に戻って行くようにしていました。ときおりお尻からフンが転げ落ちることもありましたが、ウサギのフンは固く匂いもないので拾ってゴミ箱に捨てるのも苦ではありません。ただ換毛期に大量に抜けて散らかる体毛については少し苦労があって、掃除が欠かせませんでした。それとて年2回ほどのことですが――。

【一気に老化が進む】

 最初の異変は昨年の5月ごろのことでした。あれほどしっかりとできたトイレがうまく行かなくなったのです。台所の三角コーナーのような専用トイレに乗ることができず、その横で漏らしてしまうことが続いたのです。
 理由は想像がつきます。赤ん坊のころから使い慣れていて、そこでしか用を足さなかったトイレが小さすぎたのです。小さくてもがんばっていたのが、老齢のために筋肉が弱って支えきれなくなったのでしょう。
 この問題は大きなサイズのトイレに替えることで割と簡単に解決しました。ただこのころから下痢をすることがあり、汚れた足で室内を歩き回って困ることもしばしばでした。9月を過ぎたころから、床に落ちているフンの数が増え始めます。肛門がゆるくなっているのかもしれません。日中寝ている時間も長くなりました。
 
 クリスマスの夜、ミースケはついに好物のニンジンに食らいついたまま眠ってしまうという失態に及びます。私が写真を撮るとわずかなシャッター音に目を覚まして飛び上がらんばかり驚くのですが、野生としてはまったくの失格でしょう。
 そして今月19日、ミースケはついにトイレの場所が分からなくなってしまいました。

【ミースケをケージに戻し、運動場をつくる】

 失禁したというふうではありません。ストーブの横とかカーテンの近くとか、自分がそうだと思い込んだ場所にわざわざ行って、そこで用を済ませて帰ってくるのです。もう新しいトイレも古いトイレも見向きもしません。そのつど自分の信じるトイレで用を足すので人間の目から見ると所次第まき散らしているのと同じになります。
 そこでしかたなく、2年ぶりにケージに入れざるを得なくなったのです。ミースケにとってはもちろん、私にとっても不本意です。しかしトイレがきちんとできず、尻回りにも汚れが目立つようになればやがて死ぬのはケージの中です。いまから再び狭い場所になれてもらわなくてはなりません。

 翌日私はコンピュータの前の椅子の下に置いていた床の保護シートとストーブ用の安全柵を利用して、ウサギの運動場をつくりました。入れてやるとゆっくり一周くらいはします。そして隅に行って、またじっとしているだけですからケージの中とさほど変わりません。
 それでも、一日に何度かこの場所で遊ばせてやりましょう。
 
(この稿、ミースケの状況によって続く)