カイト・カフェ

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「ペットロス8か月後の発見」~ウサギとカメの教育科学①

 ペットのウサギの最後の一羽が死んで8か月が経った。
 そろそろ歩き出す時だ――。
 そう思って学校に、余ったエサをプレゼントしに行ったのだが・・・、
 ウサギはいなかった、
という話。(写真:フォトAC)

【ペットロス8か月】

 わが家で飼っていた三羽のウサギについては再三書きましたが、その最後まで生き残った一羽が2月に死んで、8カ月余りが過ぎました。自分の年齢と先々を考えると今から新たなペットを飼うのは不道徳ですから、ゲージやらエサバチやらは早々に捨てたのですが、それぞれ一袋近く余ったエサ(ペレットと干し草)は誰かにあげるつもりでそばに残しましました。
 しかし以前、散歩の途中で見かけた近所の飼いウサギは、訪ねて聞くとすでに死んでいて、あとは学校くらいしか思いつかないのでいつか届けに行こうと思ったまま8ヶ月――未練もあったのかもしれません。
 
 私のペット・ロス・シンドロームを心配した妻が、「今度は犬でも飼ったら?」と勧めるのですが、犬は毎日散歩に連れていかなくてはならず、齢を考えると自信がありません。そう言うと妻は「あなたなら大丈夫よ!」とポンと背中を押しますが、妻が前々から犬を欲しがっていることは分かっていますので、「大丈夫よ」と言われても素直になれません。 「私も一緒にやるから」とか「世話をするから」と言わないのは結局、「世話はあなた、かわいがるのは私」となりかねないからです。だったら再びウサギを――とか考えているうちに時は過ぎて行きます。

 しかしいよいよ年の瀬も迫りました。どこの学校でも冬のエサ不足が心配になるころでしょう。そう考えると重い腰を上げて近隣の学校に向かったのです。先週の金曜日のことでした。
 電話をしてから行くことも考えましたが、そんなつまらないことで先生たちを動かすのも気が引け、《それとなくウサギ小屋のそばに置いて、手紙でもつけておいておけばいいや》と、その程度の気持ちで出かけたのですが・・・。

【表示の魔力と驚くべき発見】

 ひとつ予定外だったのは、現職教員だったときは低かった学校の敷居も一市井人となった私には驚くほど高いということです。かつては勤務校以外の学校でも、意外と気楽に入っていたのです。ところがあの、どこの学校にもありそうな、
「関係者以外の方の立ち入りは、ご遠慮下さい。学校長」
の看板が意外な魔力を発して、私を中に入れてくれません。
 あの種の看板の大部分は2001年6月の大阪教育大付属池田小学校の児童殺傷事件の際につけられたもので、私などは「あんな看板、何になるんだ」と冷ややかだったのですが、意外と役に立つものだと感心しました。看板を見ながら脇を抜けて校地に入る輩は、やはり普通ではないのです。必然的に不審者ということになります。

 “普通”の私は中に入れない――仕方ないので近くでたむろしていた小学生に声をかけ(これも危険な行為ですが)聞くと、
「ウサギはもういないよ。前はいたけど、今はいない――」
 自分の娘や息子が小学生だった頃の記憶を頼りにやってきたのですが、考えてみればそれも20年近く前のことです。あのころウサギの横でうるさく鳴いていたニワトリたちは――と思い出して、そのあたりからだととうぜん聞こえていいはずのニワトリの鳴き声が、まったくないことに気づきます。

 しかたないので、子どもたちに礼を言って次の学校へ向かいます。児童館に勤めていた時の最寄りの小学校です。そこで今度は、庭でクリスマス・リースの試作みたいなことをしている女の先生たちを見つけ、「こちら、ウサギは飼っています?」と声をかけます。7年前にはたくさんいて、小屋の場所も知っていたのですが、許可は取らなくてはなりません。しかしここでも、
「以前は飼っていたんですけどね、今はいませんね」
 次にもう一校、こんどは敷地外の道路からウサギ小屋の見える学校に行ったのですが、ここも農具の物置になっていました。そして私は気づいたのです。
 学校から動物がいなくなっている――。

【実際にウサギは少なくなっている】

 教員の働き方改革の観点から動物飼育が問題になっている、というニュースを聞いたのはつい1年ほど前のことでした。中学校の部活ほどではないものの、確かに“飼育”は休日の教師の負担になっています。
 学校では動物飼育を見なおし、縮小する方向で動いているのかもしれない、行く先々でウサギがいなくなっているとしたら、そこにはある程度共通な理由があるはずだ、そう考えて家に帰って調べると――ありました。本年1月20日のNHK特集「消えたウサギ 働き方改革と命を学ぶ意義とのはざまで」です。

www.nhk.or.jp それによると
公的機関による全国的な統計はないが、例えば大阪府教育委員会の調査によると、ウサギやニワトリなどを飼育する小学校はおよそ80%だった15年前から大きく減少し、今年度で20%あまりとなった。
のだそうです。
 80%から20%への急落、いったいどうなっているのでしょう。
(この稿、続く)