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「寝屋川事件の不思議」~なぜコメンテータは予想を外しても平気でいられるのか

「寝屋川事件の不思議」と言っても事件そのものの謎という話ではありません。テレビに出て来る専門家やコメンテーターはなぜあんなに推理を外してなお、のうのうと出演し続けられるのか、という不思議です。
 そもそも遺体の遺棄現場に二台の車が行き来していた(らしい)という段階で、「十代の少年不良グループ」とか言っていましたが蓋を開ければ四十代の、おそらく単独犯。

 二人が拉致された時間も、自転車が有料駐輪場に自転車の置かれた午後3時以降、ということになっていましたが、これも結局、午前5時過ぎのかなり早い段階、というふうに変わってきています。
 2月に川崎で起った中一少年殺人事件と同様のグループを想定したようですが、そもそもあんな猟奇的な殺人を集団で行うことは簡単ではありません。誰かが怯え、誰かが止めています。それができるのはカルトだけですが、中学校1年生とカルトではやはり距離がありすぎるでしょう。車二台といった時点で普通なら「遺体の始末に困った犯人が友だちを呼びつけたな」と考えるところですが、頭の中に川崎の事件があるとそうした考え方はできなくなるのかもしれません。

 拉致の時刻にしても、あれほど携帯の好きな子どもたちが午前6時過ぎから午後3時まで、一回もLINEを開かず返信もしないのはその段階ですでに制圧されていた、そう考えるのが当然でしょう。中高生ならほとんどそう推理するはずです。
「ボクなら、(携帯を)見られるものなら絶対見ている」

 たぶんあの晩、少女は二度と帰らないと強い決心をして家を出たのです。ひとりでは心細いので少年も誘いました。泊まるところには困りません。なにしろ簡易テントがあって何度も宿泊体験をしてきたからです。
 しかしここで誤算が生じます。雨です。簡易テントは雨を透過してしまいますから中はビショ濡れ。宿泊というわけにはいかなくなったのです。家には絶対に帰りたくありません。
 そこで知り合いにメッセージを送り、あるいは直接電話をして泊めてくれるよう依頼するのですが、深夜の急な頼みに応えられない友だちや、そもそも眠っていて気がつかない友だちがいって宿探しはいっこうにうまくいきません。二人はしかたなく家出掲示板のようなサイトにもメッセージを上げることにします。
 午前5時過ぎ、早起きをした犯人はネット上の依頼に気づいて返信し、契約を結びます。車を走らせ早朝の寝屋川駅で声をかけると二人は簡単に乗り込んできます。知らないおじさんではなく、ネット上で知り合いになった親切なおじさんだからです。

 以上は容疑者が逮捕される以前に私の娘のシーナが私に語った推理です。これだと犯人が人気ない寝屋川駅で子どもを拾えると考えたことや、中学生が二人もやすやすと犯人の手に落ちた理由が説明できます。
 もちんそれが当たっているとは限りません。しかし年がら年中スマホに触っている中学生とFacebookTwitterが大好きな中年男が、ネットで知り合っていた(またはそのとき知り合いになった)という可能性にまったく言及しない“専門家”というのはいかがなものかと思うのです。

 思えば18年前、いわゆる神戸児童殺傷事件の際、マスコミは犯人中学生が逮捕される直前まで「黒い服をきた、がっちりした体形の30歳前後の男」を追っていました。
「学校殺しの酒鬼薔薇」ですから学校に対する深い恨みを持って殺人を犯したことになっていましたが、中高生だったころの恨みを10年以上も保ち続ける人間というのが私には想像できませんでした(本気だったらもっと早くに行動を起こしている)。眉唾だなあと思っていたらやはり犯人は違っていた(そういう私も二十歳前後の犯人を考えていたのですが)。

 そのころもそうでしたが、今もマスコミの“専門家”たちは、息をするのようにいい加減な言葉を口にして生活の糧をえているのです。