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「ベテランの味」〜避難訓練、計画に書かれてないこと

 金曜日は避難訓練ご苦労さまでした。

 子どもにも言いましたが、訓練は常に100点満点でなければなりません。なぜならいざ火事・地震となれば、訓練の7割も達成できれば御の字だからです。火の粉が降りかかったり余震が繰り返される中で、「練習通り本番も」などということはできるはずがありません。

 100点満点の訓練の7割だったら70点です。これなら児童生徒全員の命を救うことができます。しかし訓練が70点なら70×0.7=49、つまり半分の点数も取れないわけです。これでは全員の安全という訳にはいきません。その意味でも、常に最高水準の訓練でありたいものです。
 私はいつもそう考えています。

 ところで昨日の訓練の最中、校庭へ降りる階段のところで田辺先生が児童全員の降りるのを確認してからまた走り始めるのを目撃しました。こういうのがベテランの味です。
 本校のような少人数の学校ならまだいいのですが、40人近い子どもの避難となると特別な配慮が必要になります。階段の下りというのはまさにそういう場面です。なぜかというと、非常に危険だからです。

 児童生徒を引率して下り階段に差し掛かると、まず最初に行うのは歩みを緩めるということです。危険ですから。それから階段を駆け下りて、あとは平らなので一気に集合場所へ走ります。それが列の先頭の動きです。しかしその間、列の後ろの方では別のことが起こっているのです。

 後ろの子たちは階段のはるか手前で立ち止まることになります。前が詰まっています。それから階段の上まで近づいて、さあ降りようと思って見ると意外なことが起こっています。列の先頭ははるか遠くを走っているのです。全員がゆっくり降りてから急いで走るのでどうしても列は長くなってしまうのです。したがって後ろの子は慌てて階段を駆け下りなくてはなりません。

 避難訓練では特に階段に注意して引率しなければなりません。列のうしろで階段を跳び下りている場合があるからです。引率者は階段を降り切ったところからむしろゆっくり歩かなくてはらないのです。できれば立ち止まり、後ろを見て全員が降り切るのを確認してから走り始めればいいのです。田辺先生がされたように。

 こうしたことはすべて教えられるかいつか自然に気づくことです。教員の仕事はいわば職人芸ですから、まじめに長く続ければいつか必ず身に着く技術です。そういうものがたくさんあります。

 避難訓練の引率要諦といったものはその典型ですが、できれば早く身につけた方がいい。そのためには頭の隅で、「あの先生なら何に注意しているかな」と心に留めておくことです。ベテランの先生方はそれぞれいろいろな“技”をお持ちです。見ていないとなかなか損なのです。