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「プールがなくても困らない、泳げなくても困らない」~学校から水泳指導がなくなる③

 夏の暑さと学校プールの設置率との間に関係はあるのか、
 設置率と市民の泳力との間に正の相関関係はあるのか、
 はたまた泳げないことで水難は増えるのか、
 そもそも泳げることは重要か?
という話。(画像:フォトAC)

【日本で一番、夏が暑くならない県】

 クイズです。
〔問題〕
 今年(2024)7月19日に、これまでの最高気温35.6度を塗り替えて初めて36度台(36.0度)に入った、全国でもっとも最高気温の低い都道府県はどこか。
〔答え〕
 沖縄県

 意外かと思いますが四方を海に囲まれると、驚くほど気温の変化が少なく、穏やかな感じになるらしいのです。ちなみに都道府県を最高気温の低い順に並べると、
沖縄県:36.0℃(2024.07.19記録更新)
北海道:36.2℃
青森県:36.7℃
岩手県:37.2℃
宮城県:37.3℃
だそうです。こうしてみると沖縄県のトップはやはり違和感があります。

沖縄県民は泳げない?】

 沖縄県には泳げない人が多い、という話も聞いたことがあります。
 四方を海に囲まれて海岸までは近く、夏も長いためかえって学校のプールの設置率が低く、水泳を学ぶ機会が少ないために泳げない、という説明でした。

 調べてみると設置率の話は本当で、小中学校のプールの設置率は都道府県別で低い方から並べると、
 北海道: 36.6%
 青森県: 54.5%
 沖縄県: 67.9%
 長崎県: 68.2%
 島根県: 71.0%
 トップ3が同じ北海道・青森・沖縄ということになると、やはり最高気温の低さとプールの設置率には相関があるのかもしれません。

沖縄県民には泳げない人」が多いかどうかについて統計的な数値は見つけられなかったのですが、昨年(2023年)7月16日の琉球新報に面白い記事のあることを発見しました。
沖縄県民は海で泳がない? アンケートで見えたウチナーンチュが「海でやること」第1位は? 水着やBBQへのユニーク回答も - 琉球新報デジタル*1

 それによると、「海で何をしている?(複数回答)」という問いに対する答えは、
 海沿いを散歩する:57.7%
 朝日や夕日を眺める:54.3%
 バーベキュー:43.6%
 泳ぐ:40.9%
 足の着く浅瀬で遊ぶ:38.9%
 
 「沖縄の人は泳げない」という説に関しては琉球新報も反応していて、
(上の項目で)「泳ぐ」と答えた人の中で、25メートルプールで足を着けずに泳ぐなどを想定して「得意」かどうかを尋ねると、「得意」は57.3%と半数を超えた。「得意でない」は39.3%だった。(中略)泳げない人が多いのかどうかについては、さらに深掘りが必要のようだ。
結論を保留にしていますが、そもそも海辺に来ているのに4割しか泳ぐ人がいなくて、そのうちのさらに4割が「(泳ぐのは)得意ではない」と答えているのですから、やはり泳げない人が多いのかもしれません。「足の着く浅瀬で遊ぶ(38.9%)」も、何となく他県ではありそうにない答えのような気もします。

 記事にはさらに、
「車中から眺めるだけ」という人も多く、「海が近くにあるから、泳がなくても見るだけで満足」との声も聞かれた。海を泳ぐ場所としてでなく、海で過ごす時間を大事にしていることがうかがえる。
とか
「海で何をするか」の堂々第一位が「散歩する」とは。驚きと同時に「だーるー(そうである)」と共感する県民も多いのではないか。
といった記述もあり、いかにも私のイメージの中の沖縄っぽくて好きなのですが、一方、それで大丈夫か? ということもあって、こちらも気になります。
水難です。

【水難は多いが沖縄の場合、泳げないこととは関係ないだろう】

 都道府県別の水難の件数というのは毎年数字が動くので決定的ではありませんが、件数の2位以下が東京都であったり千葉県であったり、兵庫県、神奈川県、そして北海道だったりすることもあるのですが、ネットで拾える限りで常に1位なのが沖縄県
 もちろん国内有数のリゾート地で、海水浴だけでなくスキューバ・ダイビングやシュノーケリングなどのマリンスポーツも盛んですから、沖縄県民より観光客の事故の方が多いのかもしれません。
 先に見たように、泳げなければ海にも近づかず、だから安全、ということもありえるので一概に泳げない人が多いから水難事故が多いとも言えないでしょう。
 
 乗っていた船が沈没して海に投げ出さるなどと言ったことはめったに起きませんから、その日のために水泳を学んでおくというのも、バカげているかもしれません。
 ただ全国的な統計からみると水難の半分は海での事故、つまり海難であったのに対し、残りの半分あまりは主に河川・用水路・湖沼でのできごとです。本格的に泳ぎにきて事故に遭ったというのではなく、川遊びで深みにはまってとか、用水路や湖沼に落ちて溺れてといった形で命を落としているわけです。
 そうした不慮の事故に際しては、泳げる、水を怖れないでいられる、冷静に対処できる、といった力は必要になってくるはずです。幸い沖縄県には大きな川や湖沼はありませんから、そうした水難には会う危険性が少ないはずです。
(この稿、続く)