カイト・カフェ

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「校長は権力の手先、しかしすぐに板挟みになってしまう」~たまにはこちらが大人になって、少し優しくしてあげよう

 長い一週間が終わり、いよいよ日常が始まる。
 厳しい日程、次々に降りてくる指示。
 しかしみんなしんどいのだ。
 時に校長先生にも、少しくらいは優しくしてあげてもいい。
 という話。(写真:フォトAC)

 詳しくは言えないのですが、事情があって、校長先生には優しくしなくてはいけないなあという気持ちになっています。そこで――、

【日程が詰むのは保護者のため】

 長い長い最初の一週間がようやく終わります。年度当初の5連荘というのはほんとうにしんどそう。しかし間に土日が入っていたら結局仕事をしていたでしょうから、一気にやっつけてひと段落の着いた明日・明後日の土日は、むしろゆっくり休めていいのかもしれません。
 来週からは再び年度当初に戦争状態――。なんとか大型連休までたどり着くとあとは夏休みまで休日のほとんどない長丁場です。健康に留意しながら頑張るしかありません。頑張りましょう。
 
 全国的にはどうやら昨日の木曜日(6日)が小学校の入学式、本日金曜日(7日)が中学校の卒業式という地域が多いようです。今日の午前中が小学校、午後が中学校という地区もあります。いずれにしろ兄弟姉妹で小中同時入学ということもありますので、保護者が両方に出られるようには配慮しなくてはなりません。
 
 新年度準備わずか3日間での入学式・始業式というあまりにも性急な日程は、教職員内部で著しく不興でしたが来週に回せない事情がありました。それも子どもをそう何日も家に置いておくわけにはいかない、という保護者たちに配慮してのことなのです。
 
 実際に人の親となって子どもが小学校に通い始めると、子どもを家に残して出勤することの不安・ストレスというのは驚くほど大きいものです。小学生も低学年なら学童保育がありますが高学年は行き場所がありません。中学校には部活保育というのがありますが、それとて一日中あるわけではなく、中には部活になじまない子だっているのです。
 幸い私の二人の子は大人しい性質でさほど心配なこともありませんでしたが、子ども次第では一日中気が気でなく、勤務中もまったく落ち着かずに日を過ごしている保護者も少なくないのです。やはり学校は早く開いてあげなくてはなりません。

【校長は権力の手先、しかしすぐに板挟みになる】

 これを過剰サービスだ、ポピュリズムだなどといわないでください。公立小中学校のほとんどは市町村の税金で運営されているのです。納税者の訴えには耳を貸さなくえてはなりません。うっかり無視したり粗雑に扱ったりするとどんなしっぺ返しがあるかもしれません。個人に力はなくても、議員という飛び道具を使ったりすることが少なからずあるからです。
 
 先生方は校長先生を自分たちのトップだと思っているかもしれませんが、校長は市役所に行くと「オマエたちは教員の長ではなく、行政の末端だ」といった指導を受けているのです。もちろん言われたからといってすぐにその気になるわけではありませんが、なにかあるとすぐに板挟みになるのは確かです。
 
 “ギブ&テイク”
 困ったときに助けてもらうことも計算に入れて、少しはその“行政の末端”にも親切にしていくといいかもしれません。もちろん準備三日で入学式という日程に文句を言ってはいけない、校長の命には従えという意味ではありません。
 有能な部下というのは、下々の意思をきちんと伝えられる人のことを言います。意思をきちんと伝えて相手の事情も訊き出し、調整が可能なら調整し、周囲と調和していく――そうした能力をガバナビリティ(被統治能力)というのだそうです。

【校長も人の子】

 校内人事に不満があったら、礼を尽くして、きちんと言いに行けばいのです。
「今さら変えろとは言いませんが、なぜ私だけこうも過重なのか、教えてほしいのです」

 そう言うだけで、こちらが決して素直に引き受けているわけではないことを知らせ、こちらに貸しがあって校長に借りのあることが確認しあえます。その上で、校長側の事情――例えばA先生とB先生が「教員免許がなくてもできることは致しません」とか言って、どう説得しても引き受けてくれないとか、C先生には一般的には明らかにできない特殊な事情があるとか、明示的にあるいは暗示的に教えてくれるかもしれません。
「いや、いや、いや。やはり先生には話しておくべきでしたね」
とか言って詳しい話もしてくれるかもしれません。校長先生の手元には、簡単に話せない事情とか職員の秘密とかがたくさんあるのです。

「実は先生の仕事を増やしたのは前の校長からの指示なのだ。この経験をさせた上で来年は引き抜きたいらしい」
といった場合もあります。私たちの知らないところで、私たちの昇任計画を立てている人がいる場合もあります。
 そして呆れたことに、
「え? そんなに多かった? ゴメン、ゴメン。いまからでも遅くない、減らすよ」といった場合も、ないわけではありません。

 いずれにしろ黙って不満をくすぶらせるのではなく、きちんと丁寧に話してみればいいのです。校長先生も一般教師の成れの果て――、悪い人は案外おおくありません。