カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「教師の品格」~引き継ぎ書類が告げ口をする

 普通は目に見えない個人の人格というものが形になって現れることがあります。
 例えば前任校を出るとき、私はステキなコーヒーカップをプレゼントされましたが、そのカップの選択に贈り主のセンスが見えます。よくもこんなものを選び、私に似合っていると判断したものだとほとほと感心するのです。
 しかしカップの選択以上に感心するのは、私がコーヒーカップを壊してしまい困っているということを、その人が知っていたという事実です。よほど観察眼があって常に周囲に気を配っていなければ分からないことです。
 プレゼントの良き贈呈者というものは、常に相手の欲しているものを掴むのがうまい人です。

 さて、焦眉の問題として人格が現れてしまうものといえば、それは引継ぎ書類です。児童生徒の記録に関する引継ぎや係りの仕事に関する引継ぎ書類、それはまるでハリー・ポッターに出てくる魔法のアイテムのように声高にものを叫びます。

 いい加減な引継ぎ書類はこんなふうに叫びます。
「この書類の製作者はだらしない。整理能力はないし、熱意もない。そして何より次の人に対する思いやりがない。投げやりでいい加減、自分の評判が落ちることも苦にしない!」

 逆に優れた引継ぎ書類はこんなふうに言います。
「この書類の製作者は実に丁寧。日々整理能力に優れ、何より後任の人に対する思いやりにあふれている。後任の人が仕事をする上で困らないように、不安にならないように、そのことばかりを考えてこの書類をつくった。いつか別のところでこの人に出会っても、安心してついていける人だ」

 私が今まで受けとった引き継ぎ書類の中で最も優れたものは、10数年前に受け取った生徒会の引継ぎ書類です。それはすべてを揃えて月別に並んでいる上に、必要に応じて内容ごとにインデックスがつけられたものでした。

 私自身はそこまでできませんが、少なくとも後任の人が不安にならないだけの書類は用意したいと思います。