『思いやり決算』のこと

 教員になった理由のひとつに「金にかかわらなくてすむ」というのがあります。前の仕事が詐欺ギリギリのものだったので(といってもそんなに悪いことをしていたわけでもない)、公立学校の教員なら汚い金銭にかかわらなくてすむという喜びがありました。しかしいざ教員になってみると、確かに汚い金にはかかわらずにすみますが、学年費や旅行貯金給食費やら各補助金の執行と、こんなに金勘定をしなければならないというのは実に意外でした。

 さて、大学で財務会計などといったものを学んで来なかった身で金銭の管理をし、会計報告を出すとなると、うまく行かないことがたくさん出てきます。しかしひとつ間違えば首も飛びかねない仕事なので、慎重に取り掛かりたいところです。

 会計報告書類を作成する上で一番大切なことは、監査人や被報告者に見やすい報告書をつくるということです。見やすいということは裏を返せば、不正があっても発見しやすい書類、ということになります。そのためには監査人がどういう書類の見方をするのか知っていなければなりません。

 私が監査人の場合は、まず収入の確定をします。これはあまり難しくありません。

 次に支出を報告書の記載にしたがって納品書・請求書・領収書と対応させて行きます。ここがポイントです。よく書かれた会計報告はここがやりやすいのです。

 左手で報告書の記載を抑えながら、右手で領収書を対応させて行くのですが、このとき記載の順と領収書の順がばらばらな報告書をしばしば見かけます。そうなると私は、左手の項目に当たる領収書をあちこち探さなくてはならなくなります。大部になると、レシート一枚を探すのに本当に苦労することがあります。

 中にはA4用紙×○箱=○○○○円というのが、ページの異なる3枚の領収書の計だったりする場合もあります。そうなると私は計算機を持ち出して計算しなおするともに、領収書の横にメモを重ねながら、この項目とこの項目はチェック済みで、この項目は○ページの第○項目と合算されているといったふうに非常に複雑な記録をつくらなくてはならなくなります。もう領収書を頼りに、全部書きなおしたくなるような瞬間です。

 会計報告というのは、領収書(領収書が一括のものである場合は納品書)の項目の順に書いてあるのが一番読み易いのです。項目に「A4用紙」が何回出てきてもかまわないのです。

 監査人は通常二人以上います。一人が苦労するということは別の一人も同じ苦労をするということです。あわせれば大変な無駄になります。

 これからさまざまな引継ぎ事項も出てきますが、正確であるとともに、常に利用者がやり易いことを最優先に考えて行きたいものです。