カイト・カフェ

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「自衛隊日報問題の不思議」〜日報とファイリングと無責任体質1

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(イメージは「パブリックドメインQ」)

 大学生1年生のときの下宿の大家さんはいろいろ煩い人で、それが嫌で普通のアパートに移ることにしました。その引っ越しの朝、バタバタと急いでいた私は、作業中に庭先にあった植木鉢を一個、無意識に蹴飛ばしてしまったのです。
 困りました。鉢の持ち主である大家の爺さんは、息子夫婦に増して煩い人だったからです。

 すると手伝ってくれていた下宿の先輩が側を通りかかり、
「そんなもの、トラックに乗せて持って行っちゃえば分からんて! こんなにたくさん鉢があるんだから」
 そう言うと破片と植物を掌に集め、さっさと軽トラの荷台に乗せてしまったのです。地面に残った土は足でパッパと蹴り散らして、証拠隠滅。
 私は心から感心しました。そんなやり方、まったく思いつきませんでした。

自衛隊の日報問題の不思議】

 さて、ここのところ国会はなかったはずの記録や日報が次々と出てきて大騒ぎです。

 北朝鮮を中心とする東アジアの情勢がひっ迫して、米中貿易戦争も起きようというときに、10年も前の書類のことで揉めていていいのか、という気持ちもありますが、ことがシビリアンコントロールに関わると言われれば引き下がらざるを得ません。
 しかし私は、これも隠ぺいなどと言った難しい問題ではなく、たんなるミスだと思っているのですが。

 私は基本的に公務員というものを信じていて――というか日本人というものを信じていて、ごく少数の例外を除けば、みんな誠実に、まじめに、一生懸命頑張っていると思っているのです。
 ワイドショウや週刊誌を見ていると、官僚というのは常に私腹を肥やすために働き、大企業の幹部たちは金に執着する極悪人のような描かれ方をしていますが、そんなことはないですよね? 

 この国の人たちは、官民どこにいても、みんな誠実に、まじめに、一生懸命頑張っている、でも人間のやることだからどうしてもミスが出る――というか、一生懸命頑張りすぎるので常にいっぱいいっぱいで、たとえ大臣からの命令であろうと、とりあえず大変な日常業務に見通しがつかないと新たな指示に対応できない、後回しになる、イレギュラーな仕事なのでおざなりになる、目の前の書類が見過ごされる――。
 稲田大臣が探せと言った“日報”が出てこなかったのはそんなところじゃないかと、想像するわけです。

 同じ状況だったら私だって「探せ」と言われた最小限の場所しか探しません。だって防衛庁のコンピュータファイルなんて、自分の部署のものだけだってとんでもない量です。そこに「日報」などというワードで検索をかければ、日本全国の施設管理日報や機器管理日報、訓練日報など、とんでもない量のファイルがザクザクと上がってしまいます。本気で探そうと思えば一日かがりでも不可能でしょう。そんな余裕はどこにもありません。
――と、ここまでは想像ができるのです。
 たぶんそんなところです。

 わからないのは次の点、一度「ない」と言ってしまった“日報”が、なぜ今頃出てくるのかということなのです。
 そんなの、後から出したら面倒でしょ?
 大臣に恥をかかせることになるでしょ? もしかしたら辞任しなくてはいけない(事実、稲田大臣は辞任しました)。
 その上、単なるミスで、時間がなくてできなかったことなのに、痛くない腹も探られる。「隠ぺい」だと言われるかもしれない。まだ隠したものがあるはずだと存在しない書類のことまで「出せ」「出せ」と言われるかもしれない、そんなの大変じゃないですか。

 そして私は内心、思うのです。

 なんで書類が出てきた時点で、消しちゃわなかったの? 私の植木鉢みたいに。

【本筋は自衛隊の日報問題じゃなかった】

 じつは今日のブログは自衛隊の日報問題に寄せて、学校の日記(当番日誌と学校日誌)について考え、この非常に単純で平板な「日記を書く」という仕事が、いかに重要でしかも難しいかか――といった話をするつもりだったのです。
 ところが自衛隊の日報問題がやたら難しく、それを理解しようとしているうちに時間ばかりかかってしまって、本論の方がまったく進めなくなってしまったのです。

 何が難しいかというと、例えば今月5日に航空自衛隊航空幕僚監部(空幕)で見つかった三日分の“日報”――とりあえず「三日分」というところから分からない。
 だって紙ベースであるんしろ電子データであるにしろ、三日分だけ単独で見つかる「日記」って、世の中に存在します? なぜ3ページだけ別扱いなのでしょう。

 しかも写真を見ると、これまで“日報”といって国会に出されていたものとは似ても似つかない簡便なもので、内容も朝日新聞によると、
各日の運航経路や時刻、空輸内容、人員や機材の異状の有無などが所定の欄に記載されていた。また、「その他」の欄には「新聞のインタビューを受けた」「各国対抗基地親善サッカー大会後、親睦夕食会」などとあった。
と、昨年出てきた南スーダンの日報とは全く趣が違います。

 いったい防衛庁で何が起きているのか、国会でなにが追及されているのか。そして繰り返しになりますが、
 なんで書類が出てきた時点で、消しちゃわなかったのか、
 明日改めて考えてみたいと思います。

(この稿、続く)