カイト・カフェ

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「運動会に関する思い出」~運動会あれこれ②

 先週の月曜日の続き。
 今日は過去に経験した私の運動会について書いておこうと思います。

 (1) 組体操

 選挙と芝居は三日やったら止められないといいます。とにかく①全員の集中と自己犠牲、協力がないと始まらない、②短期間に結果が出る、③当たれば天国失敗すれば地獄、ということで、人間を夢中にさせる要素が満載です。そして運動会の組体操も、全く同じ要素を持っています。

 難しい技に成功した時の達成感・高揚感、高まる団結力、そこに至るまでの真摯な努力、自己犠牲、連帯感、そういったもの一度でも経験すると、組体操に寄せる教師の想いは動かしがたいものになります。

 中でも5段のピラミッドというのは挑戦に値する演目で、3段の塔に比べると高さはずっと低いのに難易度は格別です。4段のピラミッドを完成させるのは簡単ですが、1段上げるだけで途轍もなく困難になるのです。
 やってみないと分からないのですが、最下層の子どもたちが支えるのは上に乗る11人の体重だけではありません。一番下では真中から左右に広がるたいへんな力が働いていて、両端の子どもは一心に内側に体を寄せているのです。5人の間隔が開いてしまうと、上の子は落ちてしまいます。

 上の子たちが戦っているのは不安定な足場と背中の重み、そして落下への恐怖です。特に最上段の一人は手早く上がれる運動神経と恐怖に打ち勝つ強い精神力がなくてはなりません。またある程度人格者でないと、下の子たちのモチベーションが違ってきます。「この子は落としたくない」と思うと、がんばりきれるのです。

 何度も見てきた5段のピラミッドですが、運動会前日の練習で初めて成功し(本番も成功した)、直後にどこかへ行ってしまった担任が、しばらくして目を真っ赤にして戻ってきたことは忘れられない思い出です。また、本番当日、最後の最後で中段の子が支え切れず、「みんな、すまん」と叫びながら崩れていったことなど、思い出は絶えません。

(2) 棒倒し

 中学校の棒倒しで、中心になる子が棒を持って逃げる、というとんでもない作戦を考えた教師がいました。棒を持って走る生徒と、何も持たずに襲ってくる敵の攻撃隊と、どちらが早いかは容易に分かりそうなものなのにやりました。結果は30秒足らずの敗戦です。

 リベンジの2回戦、今度はこちらの方が先に倒したのに反則負けになってしまいました。攻撃隊の数人が口に水を含んでいて、それを敵に吹きかけたというのです。そんなアホな作戦を考えた教師も教師ですが、本気で信じて実行した子どもも子どもでした。それにしても反則を犯した生徒たち、競技前の入場から互いの応援合戦、そして1回戦の間中口に水を含んだまま我慢していたわけで、そのアホさ加減にも職員一同ほんとうに感心したものです。

(3) リズム

 表現運動の多くは教師と児童の合作です。そういうと中学校の先生方は非常に驚きます。保護者やその他の観客も、まさかあれが自作だとは思っていないでしょう。曲の選択も含め、すべて一からやるので、私もかなり入れ込んで指導したものです。

 私の得意は「忍者」で、「ちびっ子忍者が訓練をしている(この部分を児童に作らせる)」→「そのうちだんだんオフザケになり遊び始める」→「そこに忍者の先生(私)が現れ、怒鳴り上げてちびっ子忍者を追い回すと場内は騒然となる」というようなことをやっていました。私が目立つところがいいのです。

 さて、雨のためにグランドが使えず体育館で練習した時のことです。曲を流したり止めたりするのが面倒なので音楽は手元のカセットデッキで流しながら、マイクは体育館設備のものを使ってやっていました。練習も最後の方になり、忍者の先生(私)が子どもを怒鳴り上げ、子どもたちがギャーギャー言いながら逃げ回るというところを繰り返し練習していると、職員室にいたはずの若い女の先生がものすごい勢いで体育館へ入ってきたかと思うと、そのまま放送室に行ってマイクのスイッチを切ってしまいまったのです。

 私がびっくりして見ているとゆっくり戻ってきて、「先生、たいへん。先生の声だけが近所中に流れていて、抗議の電話が来た」
 音楽が一緒だったらそうでもなかったでしょうが、私の声だけだったら大変です。
「この〜、バカ者どもが! もう許さん! 二度とできないようにおしおきじゃ〜!」とかやっていたわけですから。