同行二人という言葉があります。これは四国のお遍路さんが笠に書いている言葉で、「自分は一人旅だがいつも弘法大師がついて一緒の旅、一緒の修行をしていてくれる」という意味です。
子どもが親の望まない方向、例えば不登校といった方向に進み始めたとき、その子の進む道を直角に曲げて望ましい方向に向けるのは、基本的に不可能です(基本的にと書いたのは、この世界、実際に何が起こるか分からないといった面もありますので・・・)。
それを果たすのはじっくり時間をかけた長い取り組みだけです。私はそのことを保護者に話すとき、「寄り添って一緒に歩き、静かに肩で押してやる」と表現します。並んで歩きながら、更に望まない方向へ進みそうだったら頑強にがんばり、チャンスがあったら静かに押し返す、ということです。
けれどそれだけでは分からないので、もっと話を具体的にします。
「一緒に寄り添って」というのは一緒に活動することです。旅行や買い物、あるいは何かの遊びを一緒にするのです。その中で子どもが抵抗感を示すとき、例えばお店屋さんで欲しい品物が見つからず店員に聞かねばならないというようなとき、知らない人に挨拶をしたり会話をしなければならないようなとき、静かにぐっと肩を押し、つまり励ましたり勇気づけたりして、それを行わせるのです。それができたら大いに誉めてやればいいのです。
よく「誉めて育てろ」といいますが、ただ子どもを観察して誉めるところを見つけようとしても無理なのです。誉めるとのできる場面をつくってやらなければ、そう簡単に見つかるはずはないのです。
同行二人、寄り添って肩で押す。私たち教員だって同じです。