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「『そんなの当り前じゃないか』という非論理の論理性と人生」~明日はアメリカ独立記念日

 明日6月4日はアメリカ独立記念日
 その独立宣言は入試でも採用試験で、最も重要な項目。
 なぜなのだろう。
 そしてそこから学ぶべきことは・・・
という話。(写真:フォトAC)

アメリカ独立記念日

 明日7月4日はアメリカ独立記念日アメリカ独立宣言が公布された記念の日です。
 世界中に独立記念日を持つ国はいくらでもあるのに、日本の教科書に載っている独立宣言はアメリカ合衆国のものだけなのは、そこに特別の意味があるからです。その点を特に強調して授業が行われることは、しかしむしろ稀かもしれません。
 しかし、
「何だか知らないけれどアメリカ独立宣言は重要らしい」
ではもったいないでしょう。ここにはさまざまな民主主義のエキスが詰まっているからです。

【宣言の構造と私たちにとって重要な理由】

 アメリカ独立宣言は大きく分けて三つの内容からつくられてします。
 第一の部分は理念的な問題。アメリカ独立宣言を話題とするとき、主として扱われるのはこの部分です。
 第二はイギリス国王の悪行とイギリス人に対する失望。国王はああしたこうしたと悪事をかなり長く書き連ねた上で、しかしイギリス国民も頼りにならないといった書き方になっています。
 そして最後は、だから私たちはイギリス本国を見限り、独立することにした、という話になるわけです。

 第一の部分はさらに三つに分かれ、

  1. すべての人間は生まれながらにして平等であり、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている。
  2.  こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。
  3.  政府がこれらの目的に反するようになったときには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立することができる。

と、高らかに宣言しています。
 同じ理念は日本国憲法の前文(*1)や第13条(*2)などにふんだんに盛り込まれています。

 アメリカ独立宣言が日本の学校で学ばなければならないのは、こうした理由があってのことです。そこには民主主義の基本原則がきちんと入っていて、しかも現在の日本国憲法に多大な影響を与えているのです。
*1 政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し
*2 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

【「そんなの当り前じゃないか」という非論理的論理性】

 アメリカ独立宣言は歴史的政治的にとても重要な文書ですが、それとは別に、私にとってはとても好きな考え方のある文章でもあります。それは第一の部分の冒頭です。
 われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした(以下、略)
  
 私たちが何かを始めようとすれば必ずそこには見解の違いが出ます。それはしばしば本質的で重要な相違ですが、その違いを議論し始めると一歩も前に進めず、何も決まらない場合もあります。
 例えば「すべての人間は自由である」というごく単純な原理も、「では犯罪者も自由であるべきか」とか「親と言えど子育てから自由であるべきだ」とか、「義務教育からの自由も保障されなくてはならないのか」とか、さまざまな問題が出てきます。そのすべてにいちいち答えが出たあとではないと「人間は自由である」とは言えないなどと言い出したら、自由と権利に関する法律は一本もできなくなってしまいます。
 そこでアメリカ独立宣言はひとつのユニークな方法を編み出します。
われわれは、以下の事実を自明のことと信じる
です。議論をしないことにしたのです。

 下世話な言い方をすれば、
「そりゃあよう、1丁目のアイツみたいな男がナ、自由だ、何でもOKだ、俺の前の道をふさぐんじゃねえ、などと言い出したら一発ぶん殴って、『てめえの好き勝手が、いいわきゃねぇだろ!』と言いたくもなるが、その問題は後回しにしようや。とにかくみんな同じように自由だっつーことにして、あとのことは後で考えればいいじゃねえか、ってことだな」
ということです。

【人生もそう生きればよかった】

 長く生きて来て思うことは、こんなデリカシーのないやり方でよかったことは、山ほどあったな、ということです。
 「人生は生きるに値するか」とか、「この仕事は本当に自分がすべきことか」とか、「この女性は自分が人生をかけてもいい人なのか」とか、そういうことは全部どうでもよかったように思うのです。

 オレは以下のことを自明であると信じる。人生が生きるに値すること、とりあえず選んだ今の仕事は自分がなすべき仕事であり、いま愛している女性は生涯に渡って愛する価値のある人であるということを。
 そんなふうに強く歩みだしておいて、自明と信じたことが間違っていたらまた考え直せばよかった、ただそれだけのことだったのです。

《参考》americancenterjapan.com