カイト・カフェ

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「思い込み:一度定まった評価は更新しにくい」~教職はやりがいのある仕事か?①

 ものごとを“こうだ”と決めてしまうと動かなくなることがある。
 人の評価やものに対する知識は、時々見直さないと陳腐化する。
 そして思い始めたのだが、
 教職は、ほんとうにやりがいのある仕事なのだろうか?
という話。(写真:フォトAC)

【ある呑兵衛の話】

 教員になる前の会社員時代、同僚にとんでもない呑兵衛がいて、日常的に酒臭いだけではなく、しばしば二日酔いで遅刻をしたりしていました。それもハンパな遅刻ではありません。午後4時ごろ出勤して6時ごろまで仕事をし、それからまた飲みに行くのです。正直なところ遅刻で出社したというより、飲みに出たものの早すぎたので会社に寄ったといった感じでした。
「酒さえ飲まなきゃいい人なのにね」
と陰口を言われていましたが、私はある時ふっと気づいて首を傾げました。ほんとうに「酒さえ飲まなきゃいい人」なのでしょうか? 酒のすっかり抜けた状態では会ったことがないのでよく分からないのです。
 もしかしたら酒以外にも欠点が山ほどある人だったのかもしれませんが、一度思い込んだことは簡単に抜けません。のちに検討したところ、やはり「飲みさえしなければいい人」でしたが、ひとつ評価が定まるといつまでもそれに引きずられて、先に進まないということがあります。

【一度定まった評価は更新しにくい】

 昨日の朝の情報番組によると、マーガリンにはトランス脂肪酸が多く含まれていて、健康的には問題の多い食品であるとの定評はすでに過去のものだと言います。10数年前まではかなりの量が入っていたのですが、改良に改良を重ね、現在ではほとんど問題にならないほどに減らされているのです。
 そうなるとバターに比べて塩分が少ないとか、コレステロールが少ないとかいった長所の方が目立ってきます。私たちがマーガリンだと思い込んでいるものの中には、本来ファットスプレッドという仲間に分類されるべき製品がかなり入っていて、これだとカロリーも塩分もコレステロールも、マーガリン以上に少なくなるのです。
 マーガリンは身体に悪いというのは完全に伝説の世界の話で、現実的にはそれよりもさらに軽い製品を普段、私たちは使っているのです。

 番組は続いて無洗米に話題を移し、おいしくない、栄養価も低い、といった評価が過去のものであることを説明します。何となく“一度水に漬かったものを乾かしたらまずくなるのは当たり前”という気もしていましたが、今や無洗米は水洗いをした米ではないらしいのです。
 昔は水洗いでしたが工場排水の富栄養化が問題となり、現在は特別な方法で、えぐみの元となるコメ表面の“肌ぬか”だけを除去しているというのです。さらにそれだとうま味と栄養のたっぷり詰まった“亜糊扮層”と呼ばれる部分も残すことができ、無洗米は普通の精米をしたコメよりさらにおいしくなります。ちなみに「無洗米も洗うと白い水が出るので透明になるまで洗った方がいい」と言われて洗ったときに水に流れ出るのが、このおいしく栄養価のある「亜糊粉層」です。
 
 思い込みを除去するのはなかなか困難で、番組のゲストが言っていましたが、
「説明書きに書いてあるなんて言われても、なかなか丁寧に読んだりできない。それにそもそも買わないようにしているから見る機会もない」
 それが実際です。

【教職はやりがいのある仕事か?】

 昨日は「細かいことは考えずに、いまあるものを良しとして進め」といったばかりなのに、今は既成概念を疑えという話を始めています。それは最近「教師はやりがいのある仕事だ」という、私にとっては自分がこの世に存在するのと同じくらい当たり前だったことが、揺らいでいるからです。
 私以外にも「教師はやりがいのある仕事だが」と口にする人は少なくありませんし、やりがいのために無限に働かされる「やりがいの搾取」を問題とする人もいますから、「教職はやりがいのある仕事だ」という認識はそれほど偏ったものではないと思うのですが、それでもいまだに、そして将来にわたって通用する見方かというとかなり怪しくなります。

 それは例えば現職の先生たちがツイッターでつぶやく声を聞き、ネットニュースを読む中で次第に広がってきた疑念です。
 今朝、Yahooニュースに並んだ教育関係のニュースは次のようなものでした。

(この稿、続く)