「数字とグラフのマジック・より苦難の道を歩む国々」~新型コロナのデータに見る世界の今⑥

 数字は客観的なものだから間違いを犯さないと思われがちだが、
 実はさまざまなことを行う。
 数字がウソをつき、グラフが人を騙すことがある。
 しかしそれでも、数字やグラフは真実を浮かび上がらせることが多い。

という話。

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(写真:フォトAC)

 

【数字とグラフのマジック】

 新型コロナウィルスの感染者数および死亡者数のトップ3(アメリカ合衆国・インド・ブラジル)について、一昨日、
3カ国の中でインドだけが14億5千
万人という一ケタ違う人口を有していますからその点を加味して単位人口当たりの人数で計算すると、アメリカはインドに対して感染者数で4・6倍、死亡者数で7・8倍も多いことになります。ちなみにブラジルに対しては感染者数で1・1倍、死亡者数で0・9倍とほぼ同数ですから、合衆国とブラジル――大統領名で言えばトランプとボルソナロは感染症対策でいかに大きな失敗をしてしまったのか、自ずと分かろうというものです。

と書きました。
 数字は分かりにくいですからここもグラフで表せばよかったのですが、あえてそうしなかったのには理由があります。インドは14億5千万人もいるから単位人口当たりにするとずいぶん目立たなくなってしまうという話ですが、合衆国も人口3億2700万人、ブラジルも2億1000万人でインドほどではないにしても単位人口あたりで計算すると値がずっと小さくなってしまうのです。

 それに対してイタリア(6100万人)やフランス(6500万人)、スペイン(4600万人)といった国々はトップ3ほどの人口を持っていませんから、一緒に並べると非常に高い数字をはじき出します。
 私としては、
「トップ3の中でもアメリカとブラジルは特にひどい」
を強調したかったわけですから、この二カ国がイタリアやフランスに紛れては困ります。そこで敢えてグラフにしなかったのです。
 これが数字のマジックです。
 
 

【より苦難な道を歩む国々】

 実際の10万人あたりの感染者のグラフは、次のようになります。

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 合衆国もブラジルも大きく順位を落とすわけではありませんが、目立つのはやはり10万人あたりで3860人あまりもの感染者をだしてしまったベルギーでしょう。10万人で3860人というのは感染率3・86%。100人の職場で3~4人は感染者がいるという計算になります。新型コロナがグンと身近な感じになります。
 ちなみに日本で3~4人の感染者がいる職場というのは計算上4000~5000人規模の企業ということになります。やはりベルギーに比べ、日本にとっての新型コロナはかなり遠い存在なのです。

 また上のグラフで高い数値を示しているオランダ・スイス・コロンビア・ペルー・チリ・アルゼンチンなどは、私たちの認識からすればとんでもない伏兵で、ニュースになった記憶がありません。
 
 

【死亡者数はさらに悲惨】

 ただし感染者数はPCRの検査能力ともかかわりがありますから、正確な数字とは言えないという考え方があります。そこでより信頼できると思われる死亡者数で比べてみます。
 するとこうなります。

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 大雑把に言ってアジア・ヨーロッパの数値は3月~5月の第一波感染拡大と9月以降の第二波によるもの、南北アメリカの数値は8月をピークとする感染拡大によるものと考えられますが、見てすぐに分かるのは圧倒的な南北アメリカの悲惨な状況です。
 日本にとっては地球の反対側の国々ですし、私たちが第一波に苦しんでいる最中に感染拡大の進んだ地域ですから、目を向ける余裕がなかったのかもしれません。今もブラジルを除いてほとんど情報は入って来ませんが、南米の国々はどこも大変な状況にあることは間違いありません。

 またこのグラフからは第一波の感染拡大で、特にイタリアやスペイン、イギリスが注目された理由も分かります。まだ他の地域での感染が今ほど深刻でなかった時期に、とにかくあまりにも多くの人々を死なせてしまったからです。

 さらに同じヨーロッパの大国でもドイツの死者は格段に少なく、感染予防の優等生と言われるのもよくわかります。しかしもちろん東アジアの国々やオセアニア、そしてアフリカの国々と比べると、さすがに見劣りする感があります。
 
 

スウェーデンの事情】

 ヨーロッパのもう一つの優等生国スウェーデンは、すでに集団免疫を獲得して人々は自由に経済活動を楽しんでいると言われています。しかしこの国の10万人あたりの感染者も死亡者数も少ないものではありませんでした。日本の41倍。人口比で日本にあてはめれば7万3600人も死なせて獲得した集団免疫に、何の意味があるのでしょう。
 また、ここのところスウェーデンは第一波をはるかに凌ぐ感染拡大に見舞われていますから、そもそも集団免疫などなかったのかもしれません。
 それなのにわたしたちはスウェーデンを、早くも危機を脱した優等国とみていました。なぜそんな過大評価してしまったのでしょう。

(この稿、続く)