カイト・カフェ

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「アンという名の少女に、子どものころに会っておきたかった」~幼い時期に読書することの意味

 「赤毛のアン」を原作とする海外ドラマが始まった。
 これまで知らなかったが、ほんとうに魅力のある主人公だ。
 もっと子どものころに、本の中でこの子に出会っておきたかった。
 今からでは遅い面がある。

という話。

f:id:kite-cafe:20200915065249j:plain(写真:フォトAC

【「赤毛のアン」が始まる】

  NHKで海外ドラマ「アンという名の少女」が始まりました。原作はモンゴメリの「赤毛のアン」です。第一回は今週の日曜日の、夜11時からでした。

www.nhk.jp*見逃した方はコチラから→NHK+(プラス)見逃し配信「アンという名の少女」(2020.09.20 PM11:47まで)

 放送されること自体を知らなかったのですがブルーレイ・プレーヤーに自動録画が残っていて、昨日、見るともなく見始めたのです。

 この時間枠では3月に「レ・ミゼラブル」をやっていて、あんなクソ長い小説をよくもまあ8回にまとめたものだと感心しましたが、今回の「アンという名の少女」も全8回、このくらいだととりあえず見てみようかという気になります。
 ところが他に仕事をしながら軽い気持ちで見始めた「アンという名の少女」、これがなかなか面白くて、すっかり魅入ってしまったのです。

 おそらく原作の力だと思うのですが、夢見がちでおしゃべりで、不器量でやせっぽちの主人公、アン・シャーリーが本当に魅力的で、思わず引き込まれます。この子に引き込まれるのは本の読者やテレビの視聴者ばかりでなく、物語の最初で出会いやがて養い親になる(らしい)マシューとマイラのカスバート兄妹も同じです。もともとは男の子を希望したにもかかわらず誤って女の子のアンが来てしまい、一度は孤児院に戻そうとするのですが結局、家に連れ帰ってしまいます。そこまでが第一回でした。

 アンを演じる子役もいいのですが、無口で善良そうなマシューと、いつも不機嫌そうで口うるさい、しかしきっと良い人に違いないマイラ、この二人を演じる俳優さんも実にいい。
 来週以降、日曜日を迎える楽しみがまたひとつ増えました。
 
 

【書物には旬がある】

 「赤毛のアン」は昔からずっと気になっていた小説です。元々は子ども向けに書かれたものではないようですが、日本ではアニメになったり少年少女名作選みたいな全集には必ず入っていますから何となく少女向けの感じがあって、私はずっと手が出なかったのです。ほかに読みたい本はいくらでもあります。

 ただ機会がまったくなかったわけではなく、娘のシーナが小さなころは盛んに読み聞かせをしていましたから、うまくすればその中に入ってきたのかもしれません。偶然「赤毛のアン」に手が伸びなかったのか、シーナはかなり早い時期から本を読むのが好きでしたから私が「赤毛のアン」の読み聞かせをしようと思う頃には、もう自分でどんどん読んでいたからかもしれません(「赤毛のアン」を読んだかどうかは知りませんが)。

 シーナはそうでしたが弟のアキュラは違いました。本よりも棒をもって走り回っている方が好きな子でしたから読み聞かせの期間も長かったのです。読むのは好きではありませんでしたが、読んでもらうのは好きな子でした。

「宝島」「ロビンソ・クルーソー」「十五少年漂流記」「幸福な王子」「ピーターパン」「ガリバー旅行記」「トム・ソーヤ―の冒険」「ドリトル先生航海記」「三銃士」等々は、みんなそのころ読んだ本です。読みながら、私も自分自身の記憶をたどるつもりでした。

 ただ読み聞かせをしながら、アキュラが面白がるほどには、私は面白くなかったのです。児童書ですから大人には面白くないと言ってしまえばそれまでですが、「十五少年漂流記」や「宝島」は自分自身が子どものころ、本当に胸躍らせて読んだ記憶のある本です。アキュラに読んでやりながら自分もあのころの気持ちを取り戻そうと張り切っていたのに、まったくそんな感じがしてこない――。

 また、実は「ロビンソン・クルーソー」と「三銃士」について、おそらく私自身は子どものころに読んでいなくて、アキュラに読み聞かせたのが初めてだと思うのですが、二冊とも記憶の中に残っていないのです。60年前に読んだ「十五少年漂流記」や「宝島」は覚えていても、20年ほど前に読んだ「ロビンソン・クルーソー」や「三銃士」は記憶に残らない――。ここに子ども時代の読書の、重要な意味があります。

書物には旬があるのです。大人になってから読んだのでは遅いのです。

 

 【孫には読んであげよう】

 「赤毛のアン」は児童書ではないそうですから、今この歳で読んでも心動かされる作品なのかもしれません。しかし無理をすることもないでしょう。おそらく子ども時代に読んでおくべきもので、もう70歳に手が届こうという私が、11歳の女の子に自分を託すのは難しそうです。

 幸いNHKで放送される「アンという名の少女」はテレビドラマとしても優れたものです。老人はそれで満足しましょう。その上で、機会があったら孫のハーブやイーツには読んであげたいものです。もし今後、女の子の孫ができるようなら真っ先に「赤毛のアン」を持って駆けつけようと思います。