オリンピックのメダルラッシュ(と言うほどでもないか)に沸く間に、山梨県や群馬・長野県にまたがる地域で起こった雪害に関するニュースがずいぶん遅れてしまいました。マスメディアは事態の深刻さを見誤ったのでしょうか。
昨日までに高速道は動きだし、国道上に閉じ込められた車もほぼ救い出されて、JRも一部を除き復旧しました。しかしその間、最大4日間に渡って何千もの人たちが自家用車の中で、公民館で、そして駅に停まったままの電車の中で過ごしたのです。
ただひたすら待つだけの時間でしたが、その中にもドラマがありました。
葛西選手の銀メダルに沸いた16日(日)、Twitter上にはトラックからパンケースを下ろし、人に配っている写真とともにこんなツイートが投稿されます。
「昨日、ヤマザキパンさんのドライバーの方に差入れ頂きました。『好きなだけ持ってってよ!』と。今は談合坂SAで規制解除待機中、大事な食事となっております。ありがとうございました。」
このツイートは24時間でおよそ1万9000回近くリツイートされ、捕捉するように、
「ヤマザキパンネ申だは(ネ申は『神』の意)! 談合坂SAでパン貰った 周りのトラックの運ちゃんも手伝ってパン配ってた!これからはヤマパンしか食べない」
「雪で閉ざされた中央道、談合坂SAでは居合わせたヤマザキがパンを配給。すた丼と蕎麦瓦屋が食料無料提供。スタバの店員さんはテイスティング講座を開いて娯楽を提供。あたたかい。皆本当はストレスフルで、ほっと和みます。一刻も早いインフラ回復を。」
といったコメントが重ねられます。
同じ状況でこうしたことが起こる国家は、世界にいくつあるのでしょう。こうした場合、むしろ考えられるのは値上げ=ボッタクリです。市場原理から言っても、食物の希少性が高まれば価格が上がるのは当然です。あるいはボッタクリより先に、逆に略奪が始まってしまうかもしれません。しかし日本では無料配布になるのです。
もちろん山崎製パンほどの企業になれば損得勘定は単純ではありません。その場でトラック一台分、ボッタクリで10万円ほど余計に儲けても、「ヤマザキはキタナイ」といった悪評で失う分の方がはるかに大きいからです。それにそのまま放置すれば一部は賞味期限切れになって廃棄処分です。だったら無料配布して評判をとった方がいい――そうした計算からみんなに分けてしまった、そういう見方もできます。しかしおそらくそうではないでしょう。
日本の会社には、機会があったら社会に還元しようという企業風土があるのです。
(この稿、続く)