カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「“おかげ様”“お互い様”の文化」~雪に閉じ込められた中で②

 15日から16日にかけて、談合坂SAでは山崎製パンが無償でパンの配布をしました。「すた丼」蕎麦瓦屋も無料提供。しかしすべてのテナントに無料提供を強制するような雰囲気ができるのも問題です。その点で「スタバの店員さんはテイスティング講座を開いて娯楽を提供」の一文には心和みました。できることをすればいいのです。

 一昨日、セブン&アイ・ホールディングスは物資をヘリコプター移送しました。セブン・イレブンやイトー・ヨーカ堂、一部は移動販売車で山奥の集落で送られるようです。もちろん適正価格での販売でしょうから空輸代は丸損です。しかし必要なことです。日本の企業はあまり宣伝を意識せずにそういうことができます。

 十分に知られていませんがこれまでも大きな災害があった場合、コンビニ・チェーンをはじめ多くの小売やメーカーは大量の食品を無償配布しているのです。在庫と物流という点では圧倒的な力を持っているからです。ヤマザキ製パンもそうした風土の中で生きていますから、決断も早かったのです。

 現在、多くの自治体が企業と「災害時における物資の調達に関する協定」を結んでいます。ですから大規模災害があった場合、企業は優先的に被災地に物資を送る義務を負っています(その場合は有償。価格や諸費用は災害前のものに準じるというのが基本です)。しかしそうした協定による食糧支援とは別に独自の支援ができるのも、日本の企業の底力です。

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 国道上やサービスエリアで何日も過ごさざるを得ない人たちがいたように、駅や電車の車内で過ごしていた人たちも大勢いました。山梨県大月駅で4日にわたって待機せざるを得なかった大学生は、その様子を刻々とTwitterで配信し、多くのフォロワーを集めました。

 

大月駅の駅員の皆さん、がんばって頂いてます。多分今日も車内泊になりそうです。今の所駅員さんに文句を言ったりイライラしてる人はいません。皆さん冷静です。困ってるといえば携帯の充電でしょう」
「今度はお弁当が配られました。 そんな中、外では除雪作業を駅員さんはされてます。駅員さんに『ご苦労様です無理しないで下さい』と言ったら『お客様の方が大変ですよ』と駅員さんのお心遣い本当にありがたいです」

 日本語には「もったいない」だの「おもてなし」だの、あるいは「おかげさま」や「お互いさま」といった他の国の言葉にはとても翻訳できそうにない重要な言葉と概念がありますが、「しかたない」が特殊な言葉として発見されたのはやはり東日本大震災のときでした。
「しかたない」は諦めの言葉ですが、そこには絶望感や悲壮感がまるでない、それどころか幽かではあるが力強い、未来への意志がある、というのです。

 自然の猛威の前にひとは何もできない。乗客はただ時間を無駄にして待ち続け、作業員たちは果てしない作業に疲労感を増加させる。そうした状況にあって、誰も文句を言わずイライラもせず互いを労わりあえる。雪に閉じ込められた中で、人々はそうした文化を確認しあうことができたのです。