カイト・カフェ

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「年度の始まりに心しておきたいこと」~2021年度が始まります①

 2021年度が始まる。
 年度の始まりに、これからの1年がどんなふうになるのか、
 簡単に見通しをつけておきたい。
 コロナとコンピュータ、そして改正「高齢者雇用安定法」

という話。f:id:kite-cafe:20210401070355j:plain(写真:フォトAC)

 2021年度が始まります。本年度もよろしくお願いします。
 数少ない読者の皆様。風前の灯ブログです。今後もどうぞお支えください。

【学校のコロナ禍はさらに一年】

 さて今年度が学校にとってどういう一年になるのかと考えたら、やっぱり新型コロナとともに過ごす一年にしかならないと思いあたりました。現在のところ16歳未満に摂取できるワクチンがないからです。

 今月から65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人から摂取が始まるそうですが、供給が十分に進んだとしても、集団免疫が成立するための人口の7割(およそ9000万人)が接種完了するには1年近くかかりそうです。
 高齢者の感染リスクが下がれば気分的にはずいぶん楽になるでしょうが、小中学生の親世代でも重症化したり亡くなったりするケースはあるのです。そうなると学校は最後の最後まで、感染予防に努力を払い続けなくてはなりません。
 新型コロナウイルスについてはだいぶ分かってきて、無暗に恐れることもなくなりましたが、まだまだ学校の負担は続くでしょう。
 学校のコロナ禍はさらに一年と思い定めて、計画などを立てた方がよさそうです。

 

【リモート学習の可能性はほとんどない】

 負担と言えば、全国的にほぼ配布の終了したコンピュータの学習も大変です。
 現代の電子機器は投げつけたり蹴ったりしなければまず壊れないようにできていますが、前提として「常識的に使えば」ということがあり、子どもの一部はまったく常識的ではありません。
 自宅に持ち帰って風呂に入れて防水性能を確認したり、電源の差込口にチーズを食べさせたり、USBの代わりにマイナス・ドライバーを差し込んでほじくってみたり、ありとあらゆる想定外に備えなくてはなりません。現在、全国に小中学生は950万人ほどいますから1万人にひとりというトンデモないガキが950人もいるわけです。用心してかかりましょう。
 事故を防ぐ教育も大事ですが、事故が起こったら誰に謝ってどう対処するのか、事前に調べて知っておくことの方が役に立つかもしれません。

 もうひとつ、
 つまるところ、通信教育を除けば、この国にリモート学習とは根付かないと私は思っています。
 この先、今回の新型コロナに関して長期の休校措置が取られる可能性はほとんどありません。また、世界のどこかで新しい感染症が広がれば、新型コロナの記憶の新しい今なら大騒ぎで対処しそうですから、次のパンデミックまでにはまだまだ時間もあります(100年くらいは大丈夫かな?)。ですから感染症対策のリモート学習の必要はありません。

 将来、社会に出てからは、オンライン会議やリモート・ワークの技能が必要となるでしょう。しかし今から訓練するほどのことではありません。黒板と紙を使った授業は日本に限っても150年、世界的には200年を越える歴史があるのです。そう簡単に克服できるものではありません。
 「児童生徒が学校に来ているのに、先生は別室からリモート学習」といった滑稽な姿が長続きするとも思えません。

 

【コンピュータの学習は、ちょっと遅れて進めるのがコツ】

 コンピュータを使った学習は、検索やお仕着せのドリル問題をやらせるのはいいですが、他に先んじて大真面目に取り組むべき課題ではないと考えます。

 いまのところ学級担任や教科担任の授業を越える映像コンテンツはありませんし、自作するにはあまりにも下準備が大変です。電子黒板に画像や動画を張り付ける技術はすぐに身に着きますが、提示する資料を探したり選んだりするには膨大な時間がかかるからです。
 そういう仕事は、他人より少し遅れて、他人をアテにしながらやるのがコツなのです。

 私は昔、中学校1年生から3年生までの社会科(地理・歴史・公民)のすべてカリキュラムを、半年でつくるという大変な仕事を成し遂げたことがあります。文科省から「各校で作成するように」という指示があったからです。でもそんなもの、今では教科書会社の出している指導書に書いてあるでしょ?
 私が死ぬほど苦労している間、他の学校でもつくっていて(大きな学校では教員が手分けをして作成した)そちらの方がよほど良いということもありました。そして2年もしないうちに、教科書会社が標準的ンなものを提供するようになったのです。

 それから10年ほどして、今度は全学年、すべて教科について「絶対評価の評価基準」をつくれという指示があり、その時はさすがに私も成長していましたからあちこちの学校に連絡して、一番はじめにできた学校からデータでもらってそれを改良して教委に提出しました。
 ほどなく教科書会社からきちんとした「評価基準表」が出され、私たちのつくったものは(カリキュラムの時と同じように)、文科省教育委員会も忘れ去られました。興味がなくなったようです。

 新しい仕事というのは、ちょっと遅めにやるのがコツで、研究指定校や先進的な人が作成し、あちこちの学校で実施・検討して、取捨選択・修正された完成品を使うのがもっとも簡単で、合理的です。無駄な苦労は避け、浮いた時間は児童生徒のために使いましょう。

 

【改正「高齢者雇用安定法」が施行される】

 60歳定年制の時代から、65歳までの雇用をきちんと守ろうと2012年に制定された「高齢者雇用安定法」が改正され、今日から施行されます。
 これまで65歳までとなっていた雇用機会を70歳まで引き上げるものですが、今回は「努力義務」で、必ずしも実施する必要はないようです。

 公立学校について今のところ話題になっていないようですが、採用試験の受験者が激減している昨今、教員確保の観点から再任用期間を70歳まで伸ばそうという動きが出てくるかもしれません。ただし教員の側にどれほどのメリットがあるのかは疑問です。

 現行制度でも65歳を過ぎても働きたい人は講師となって続ければいいのです。講師だと再任用の2倍近い給与。再任用が70歳まで延長されれば給与の増額は望めません。もちろん必ず仕事があるという点では再任用制度にもメリットはあるのですが、若いなり手がいない以上このさき講師の口がなくて困るようなこともないように思うのです。

 こういったことにも気を配っておいた方がいい2021年度です。