学力問題ではしばしば昨年12月15日に発表された「国際数学・理科教育動向調査」の結果が引用され、日本の子どもの学力低下ははっきりと示された、ということになっています。しかしどうでしょう?
当時、産経新聞が「韓国が参加した中学校では数学・理科ともシンガポール、韓国、台湾、香港の四カ国・地域を下回り、東アジアの先進国・地域で最下位だった」(12/15)と書いたので私は非常に腹を立て、詳しく調べたのです。
なぜ腹を立てたかというと、「東アジアで最低」は事実にしても、その「東アジア四カ国・地域」は世界のランキングの上位を独占しており、東アジア5位の日本は世界の5位でもあることを知っていたからです。世界第5位は決して恥ずかしい順位ではありませんし、それも6位のベルギーをぶっち切りで引き離しての5位ですから立派なものです。それをあたかも「遅れたアジア、そのアジア諸国にも負けた日本」といった印象で書くから怒るのです。
他にもウソはあります。たとえば「日本の子どもは成績はまずまずであるが、理科嫌い、数学嫌いが世界トップクラスで、こちら方が問題がある」といった言い方です。これも半分は本当で、数学嫌いの中学生は日本の場合、世界第3位ということになっています。しかし台湾だって4位、韓国も5位です(香港は14位、なぜかシンガポールは45か国中32位という好成績です)。
理科嫌いにいたっては、韓国1位、台湾2位、日本3位、香港6位(シンガポールは13位)。つまり日本の子どもだけが理数嫌いではなく、成績の高い国はこぞって理数が嫌いということになります。
逆に理数が楽しくて仕方がないという国、数学1位のボツワナは成績43位(45ヶ国中)、2位エジプトは37位、3位モロッコが41位となり、理科好き第1位もボツワナで成績は43位)、2位エジプト35位、3位チュニジア38位です。
こうなると問題は日本のだけのものではなく、なぜ理数の成績と理数嫌いは正の相関を持つのか、という一般的なことになってしまうはずです。
もちろん、「だから学力を上げる以上、勉強嫌いが増えてもしかたがない」といった話になるわけではありませんが、マスコミの書きたてることを一緒になって信じ、教師として卑屈になっていくことだけは避けたいと思うのです。