カイト・カフェ

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「こと教育に関して『外国では』ときたら、それは真似してはいけないことだ」〜自分の目で見る⑩

 ここのところずっと、政府やマスコミは嘘ばかりついている、とくに教育について「日本は遅れている」「レベルが低い」「間違っていると」いった話が出たら、それがどれほど統計的に正しく見えても必ず間違っているから見直した方がいいというお話をしてきました。

 2003年のいわゆる「PISAショック」(OECDの学力国際比較で日本の子どもの成績が急落して社会に衝撃を与えた)の際、これはゆとりゆとり教育の弊害だという話になったのも、今となれば悪しき扇動でした。ゆとり教育は2002年から本格稼働したのですからそんなに簡単に結論が出るわけはないのです。

 その時ダントツ1位だったフィンランドはその後、長期低落傾向に入ったように見えますが、あのころフィンランドを持ち上げた人たちは、今どのように考えているのでしょう?

「いやあ、やはり児童生徒数50人以下の学校が全体の40%(500人以上の学校はわずか3%)といった少人数教教育を見直したのがまずかったのではないでしょうかねえ」(2003年当時はそんな少人数教育の話はなかった。少人数だから高学力である可能性はまったく語られなかった)

フィンランドは79年から修士号を持っていないと教員になれないとか言ってあたかも全員が大学院を修了しているかのように宣伝されましたが、大学(5年生)を卒業すると全員修士のもらえる国なんです。EUに加盟するまで“学士号”は存在さえしなかった。したがって79年から修士号がないと教員になれないというのは“高卒だけではだめですよ”といった意味で、それも正規職員の話だから講師にはいまでも高卒資格の人がいますよ」(そんな話も昔はなかった)

「当時のフィンランド教育相は好成績の理由を聞かれ、『一生懸命訓練して、一生懸命練習したからだ』と答えていたから、そうしたシステムに何らかの変更があったのかもしれませんね」(そんな教育相の談話も当時はあまり伝えられなかったと思う)

 そんなものです。

 逆に日本の成績が飛躍的に回復したPISA2013(数学的リテラシー《10位→7位》、読解力《15位→4位》、科学的リテラシー《6位→4位》)にしても、そんな喜ぶほどのことはありません。数学を例にグラフにしてみると、
 ベスト5の上海・シンガポール・香港・台湾・韓国と日本との間には明らかな差のあることがわかります。

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 困ったことにフィンランドが1位の時はこぞってファインランド詣でに出かけたのに、上海(中国)やシンガポール・台湾などだと誰も視察に行きません。
 それはアジア蔑視というものではなく、中国やシンガポール・韓国などのとんでもなく高い学力の理由を、私たちが薄々知っているからです。そしてあんな学力社会・受験競争はとても真似できない、復活させたくないと思うから誰も参照しようとしないのです。
 日本の子どもたちに死ぬほどの苦労をさせなくても、教師の指導力向上で何とか対抗できるはずだと信じている人たちもいます。

 一方、数学や国語では中・韓・シンガポールの後追いを避けながら、別の分野ではしっかりと見習っていこうとする試みも見られます。それは道徳教育です。
「道徳教育の充実に関する懇談会(文科省)」第2回(平成25年4月24日)配布資料
「資料7 諸外国における道徳教育の状況について」
をみると、道徳の教科書をきちんと持っている国は中国・韓国・シンガポールのほかになく、教科書の充実を主張する政府は、明らかに『道徳は中・韓・シンガポールに学べ』という方向に舵を切っていることがわかります。

 だいぶしつこくなりました。
 結局、言いたいことはもとに戻って、「こと教育に関して『欧米では』ときたら、それは真似してはいけないことだ」ということです。
 いや、これも書き換えておきましょう。
「こと教育に関して『外国では』ときたら、それは真似してはいけないことだ」
なのです。

 いろいろ不備や瑕疵はあるものの、現状で日本を越える教育システムを持つ国はほかに一国もないからです。
 この国を安易に変えてはいけません。

(この稿、終了)