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「年賀状じまいの作法」~ショートメールで連絡が来て腹が立った話

 お互いに年賀状はやめしょうという話がショートメールできた。
 いきなりのぶっきら棒なやり方に腹が立った。
 ことを進めるには手順があるじゃないか――。
 そこで私は考えた。
 という話。(写真:フォトAC)

【年賀状じまいの通知がショートメールで来た】 

 突然ショートメールにこんなメッセージが届きました。
「ご無沙汰しています。元気ですか。今年からお互いの年賀状のやりとりは、やらないということで、よろしくお願いします」
 送り主は4歳年上の従兄で、かつての同業者、教員。しかしここ十数年は親戚の葬儀でしか会わない人です。子どものころはかなり仲がよく、というよりはジャイアンスネ夫みたいな関係で、もうひとりのジャイアンみたいな従姉が割って入って互いに私を子分にしたがるので、幼少のころから右顧左眄、かなりつらい人生を過ごしてきました。
 そんな親分・子分ですから「やらないということで、よろしく」といったぶっきら棒な言い方も、向こうにとっては当たり前でしょうが、私の方は相当にカチンと来ています。
 何の相談も前触れもなく、「お互いの」と、こちらが出さないことまで決められたという苛立ちもあるのですが、そもそもこういうことはショートメールで済ませていいものではないと思うのです。

【年賀状に意味を持たせている人がいる】

 もちろんそこには年賀状に対する思い入れの差があります。例年、従兄から来るのはまったく通り一遍のもので、家族の様子とか生活の様子とかは、それこそほんのわずかも見えてきません。それに対して私の出すものは少なからぬ工夫をして、私自身や家族の様子が分かるようにしてあります。そんな感じで、
「ウチはこんなふうですよ、お宅はいかが? 私はあなたのことを気にかけていて、忘れたことはありません。お互いまた一年間、がんばっていきましょう」
とエールを送っているわけです。

 朝、知っている人と会えば「おはようございます」と言ってこころを開き、興が乗ったり必要があればそこから会話を始めるように、「おめでとうございます」と言い合って縁を繋ぎ直し、改めて一年を始める、それが年賀状だという強い意識があるのです。
 それを、
「やらないということで、よろしくお願いします」
の一言で済ませるのは、ほとんど絶縁状を投げかけられたのと同じ。「明日からは朝、お会いすることがあっても挨拶はしません。あなたもしないでください」と言われたら、やはりいやじゃないですか。それと同じです。

【それにしても腹が立つ。心に浮かぶさまざまな疑念】

 妻に話すと、「それはあなたの特別な感じ方よ」と一蹴します。
 もう互いにいい齢で年賀状を書くのも億劫になっている、それに今日までほとんど付き合いがなかったということはたぶん今後もないだろうということだから、どこかでやめるしかない、だったらそれが今でもいいじゃないか――と、そう考えるのが当たり前だというのです。

 もちろん年賀状が単なる重荷でしかない人が大勢いることは知っています。しかし私のようなこだわりのある人間も、あるいは本気で親愛の情を表したい人もいるのです。だったら年賀状じまいの基準は、そこに置くべきです。あとはどうなろうとかまわない、絶縁でけっこうということなら別ですが、私たちはまだ親の世代が90歳代~100歳代で生きていて、今後もつきあっていかなくてはならないのです。
 
 私の心の隅にはいくつかの疑念があります。
 そのひとつは選択的に切られたのではないかということです。大切な人、気持ちの残る人には相変わらず年賀状を出し、そうでない私は優先的に捨てられた、という疑いです。
 ショートメッセージというやり方も、それを補強する材料に見えてきます。Eメールと違って一斉送信というのがそこそこ厄介でしょ? それでもやったのか、あるいは私を含む数人だけショートメールでやったのか。
 
 あるいは12月もそろそろ終盤に差しかかろうといういま、年賀状じまいの話をするというのも私を大切にする気持ちがない、思い遣ろうとしていない証拠に思えます。すでに書き終えて投函しているかもしれないのに、受け取る気はありませんと知らせるのはダメでしょ。
 
 さらに本当のことを言うと――、実はここに書いたことのすべては、私の心の中に起こったことで、従兄の心には微塵もなかったことだと私は知っているのです。何しろジャイアンですから、思いついたら配慮なんてまるでないのです。裏表なく、腹の底まで表面と同じです。次に会うことがあれば、何のこだわりもなく今まで通りの付き合いが始まることは明らかです。面倒くさいことのないいい人です。

【年賀状じまいの作法】

 ただし私は、このことからいくつかを学びました。それはいつか年賀状じまいを書くにしても、

  1.  それは封書またははがきで、
  2.  遅くとも12月初頭、喪中はがきとほぼ同じタイミングで、
  3.  年賀状をやめる納得できる理由を付記して、
  4. 「あなたに対してだけやめるわけではない」という点を強調し、
  5.  こんにちまでの礼を十分に尽くして

送ろうと、そんな決心をしました。大事なことでしょ?