ところが途中で、とんでもないミスをしたことに気づく。
料金の二重払いだ。
だが大丈夫。私には魔法の言葉がある。
という話。
(写真:フォトAC)
【キャッシュレス、具体的な話になると分からないことが多すぎる】
先週、東京の娘のところに行ってキャッシュレス生活を楽しんできた、というお話をしました。
kite-cafe.hatenablog.com
そのとき、こころの底に引っ掛かりながら記録しなかったことがあります。それは行きの電車についてミスを犯したのかもしれない、ということです。
JRの予約サイト「えきねっと」で指定席券と乗車券を購入し、その瞬間からずっと困っていたのですが、どうやって乗ったらいいのか、そしてどうやって都内の駅を出たらいいのか、そこが分からなかったのです。というのは、私の家から私鉄ローカル線に乗って地方の中核都市駅に行き、そこからJRに乗り換える――その私鉄とJRは駅構内でつながっていて、私鉄=JR間に改札がないのです。ですからかつてはいったん外に出て切符を買い直すといった面倒なことはせず、そのまま乗り換えたJRの車内で、乗務員から切符を購入するのが常でした。
ところが数年前から車内で買う切符が割高になり、しかも全席指定になったので、いったん改札を出て買い直すことは必然になってしまったのです。面倒は我慢しますが、時間が惜しい。なにかの事故でモタモタしていると予定の電車に乗れず、次は1時間後になります。
けれど私は考えます。
いくら何でもIT時代、そんな面倒なことをさせるはずがない。それがひとつの考え方。ネットで乗車券を購入したのだから、たいていのことはITが処理してくれるに違いありません。けれど乗車駅で改札を通らないと、乗車記録がないのに降車記録だけが残るという、実に妙なことになります。どうなっているのでしょう?
【都合のいい情報には、すぐに飛びつく落とし穴】
そこで「えきねっと」のページのあちこちを見ていると、こんな記述に出会います。
車内改札はございません。駅係員または車掌より特急券の提示を求められた場合は、お申込み完了メールやマイページ等から購入履歴をご提示ください。
“なんじゃい、ただそれだけのことかい”と胸をなでおろします。“車掌さんが来たらその画面を見せればいいんだな”。
ところがしばらくすると、また疑問が浮かんできます。
“あれ? 車内で車掌さんに声をかけられたら見せればいいとして、駅を出るときはどうするんだ? 自動改札機の端末に画面をかざすのか?”
そこでまたあちこちを読み進めると、
乗車券は、交通系ICカードやモバイルSuicaをご利用いただくか、別途、紙のきっぷをお買い求めください。
“そうだよな、わが田舎駅でも最近交通系ICカードが使えるようになった。あれなら時間のロスもない!”
私は私鉄ローカル線を降りると改札に向かい、私鉄の切符を機械に流し込んでいったん外に出ると、踵を反してJRの自動改札をスマホでピピッと鳴らし、あとは順調に娘の最寄り駅に着いたのでした。
【二重払いしたかも・・・】
「えきねっと」で順次操作を続けていくと、指定席券と乗車券の両方を購入するか、指定席券だけでいいのか、という画面が出てきます。往路の時も見たはずですが記憶にありません。しかしICカードについて思いつかなかった時点のことですから、おそらく指定席券と乗車券の双方を購入したはずです。
そうなるとスマホでピピッと鳴らして入退場した、あのICカードの分はどうなるのだ? 二重払いしてないか?
少し迷ったのですが、それだってIT時代。その程度の人為的ミスは簡単に見抜いて修正してくれているはずだ。そう思う一方で、クレジットカードの利用履歴とICカードの利用履歴の照会・修正なんて、できるはずがないじゃないかという思いもあります。
したがってあとはクレジットカードの明細待ちです。もしかしたら相殺されて請求されていない・・・。
【1億2600万人にひとりのバカ】
これが二十歳代の私だったら「高い授業代だった」と自嘲しながら泣く泣く諦めたのですが、いまの私には魔法の呪文があります。
「一万人にひとりしかやらないようなバカなことを、やっている可能性のある人間がこの日本には1万2600人もいる」
したがって
「こうしたバカのための対応策も必ずあるはずだ。恥ずかしくない!」
これが私の信念です。
私は「えきねっと」の利用履歴と交通系ICカードの利用履歴の二つを、すぐに示せるよう準備して、さっそく駅に向かいました。
ところが・・・、
もしかしたら私はこの国で1億2600万分の一、つまりたった一人の稀有なバカだったのかもしれません。駅員に二つの画面を見せて返金を求めると、「そういう例はないので、上の許可を取ってきます」とか言って奥で電話をかけ始めます。
しばらくすると引き返してきて、私からスマホを預かると機器に載せ、利用履歴を写してまた奥へ。再び電話で何かを話し、最後は若い女性職員を連れてきて私のスマホ画面を撮影し、さらにもう一度それを機器に乗せて、
「上の許可が出たので返金します」
現金が出されないので、
「あの、お金は?」
と訊くと、
「現金では返せないのでICカードに入れました」
確認すると4千数百円、たしかに返金されていました。
またひとつ勉強しました。私は1億2600万人にひとりのバカかもしれませんが、使った時間は20分ほど、それで4千数百円取り戻せたのですから時給にすれば1万2千円以上、それだけ稼いだかたちです。
満足、満足。