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「教師の夏休みの実相」~妻、シンプルライフをめざしてみる①

 児童生徒のいない夏休みを、先生たちは何しているのだろう?
 興味は尽きないみたいだが案外平凡だ。
 比較的余裕のある企業で普通に働き、普通に休み、
 普通に旅行に出る――ただし海外になんて行くわけにはいかない夏。
 という話。(写真:フォトAC)

【児童生徒のいない夏休みを、先生たちは何しているのだろう】

 長い長い夏休みを教師はどのように過ごしているか――これが意外と世間の人々の興味を引くみたいです。
 ほんのひと昔前までは、
《教師は子ども相手の楽な仕事なのに高給取りで、年がら年じゅう楽をしているくせに、長い休みは遊んで暮らしている》
と信じられていて、しかしそれなりに私たちはしっかりやっていたので何の痛痒なかったのですが、コンプライアンスが何とかでやたら具体的に、細かく説明しなくてはならない時代になったら、かえって面倒なことになっています。

【長期の海外旅行は難しい】

 学校が夏休みの間の教員の生活については、あちこちのSNSおよびブログあるいはネットニュースにあるように、山ほどの研修を除けば普通に勤務して、日頃できない仕事を行うほか二学期の準備をしたりするのが一般的だと言えます。あるいは土日休業だけでなく、夏季厚生休暇や特別休暇、あるいは学期中に取り損ねている年休を使って家の仕事をすることも少なくありません。
 さすがに長期休業中は「ものすごく忙しい」ということはないので、日頃より遥かにゆったりとした気持ちで生活を送ることができます。
 
 土日・休日や夜間には、映画や演劇鑑賞に行ったり釣りやスポーツに励んだり、といったこともありますし、観光に出ることもあります。しかし旅行といってもせいぜいが二泊三日の国内旅行、独身の若い先生が2~3日の予定で東南アジアに出かけるという話はあっても、家族持ちが皆で大型の海外旅行という訳にはなかなかいきません。一朝、生徒に事故があれば、すぐに帰国しなくてはならないからです。一人20万円などといった豪華な旅行は怖くて計画できません。家族全員で80万円もかけた旅行を2日で切り上げて帰ってくるなんて、いやでしょ?

【教え子に事故があって、それでも旅行は続けられるか】

 いやだからといって、事故があっても全行程を済ませて帰ってくることは、場合にもよりますが社会は認めてくれないでしょう。

 児童生徒が事故で亡くなるといった非常事態はもちろんですが、行方不明はどうでしょう? 《ネットで知り合った男に連れ出されたらしい》は、結果次第でたいへんなことになりますからやはり帰国でしょうが、そうでなければ判断の難しいところです。慌てて帰国の便に乗ったら成田に到着する前に本人が元気よく自宅に戻ってしまった、そんなことはいかにもありそうです――というより経験上、その方がはるかに確率は高い。しかし万々が一のことを考えると《やはり帰った方がいいかな》ということになります。

 《生徒の万引き》なら帰国しなくてもいいでしょうが、《特殊詐欺の出し子をやっていた》はどうでしょうか。「来週帰国しますので、その後でお願いします」では、筋は通っても情が許してくれません。のちのちに禍根を残すくらいなら帰国した方がいいかもしれません。
 総じて、事件事故が起こったら帰国の方向で検討した方がいい場合が多そうです――と、そうなると《だったら最初から行かない方がいいや》ということになり、特に学級担任を持つ先生方はなかなか長期の旅行に出られなくなるのです。

【私の場合、我が家の夏休み】

 ちなみに私は現職中、2泊以上の旅行をしたのは新婚旅行の1回だけでした。行く前には生徒に思い切り触れ回り、
「頼むからこの週だけは大人しくしていてくれ。結婚式も向こうでやるのだから、呼び戻さんでくれ」
と土下座する勢いで拝み倒して出かけたものです。昔の中学生ですからそのあたりはきちんと仁義を通してくれました。

 それ以降は国内の一泊旅行がほとんどで――というより、二泊以上の旅は私が修学旅行の引率で京都・奈良に行った時くらいで、家族との2泊以上の旅は、退職するまで一度もありませんでした。

 さて、
 私はすでに教員でありませんが、妻は講師と言えど現役の教師です。その教員である妻が、今年の夏休みどう過そうとしているのか、それについて書こうと思ったのですが、前触れだけでずいぶん時間が経ってしまいました。
 具体的なことは明日お話ししましょう。シンプルライフをめざそうとしているという話です。
(この稿、続く)