「楽になったようだが、私には面倒だ」~私のキャッシュレス元年②

 キャッシュレスの波は数年前からジワジワと押し寄せてきていた。
 そこで私も一部を利用していたが、しばらくぶりに使うと勝手が違う。
 進化して便利になっているらしいが、私には面倒だ。
 私だけではなく、都会人にも面倒なことがあるらしい。

という話。

(写真:フォトAC)

【キャッシュレス、この前と何かが違う】

 交通系ICカードはコロナ禍以前から東京に行くたびに便利に使っていました。しかし当時はカードをスマホケースに差し込んでの使用でしたから、他の人と同じように端末にスマホをかざしていても、実際にはカードを使っているだけの話です。なにしろ使っていたスマホiphone6でしたから、内部に取り込むことができなかったのです。
 別に不満もなく、そのままでもよかったのですが、LINEがiphone6を非対応にしてしまったため泣く泣くiphone13に買い替えたのを機に、ウォレットの中に取り込みました。人通りの少ない場所の自販機で実験済みですので、使えることは分かっていました。

 列車の予約も、スマホでやっても良かったのですが、使い慣れているコンピュータから行ないます。「えきねっと」というサイトからです。これについてもコロナ禍以前に何度か利用したことがありますから、あまり不安はありませんでした。ところが今回、二年前とは違った事態が起こります。予約の列車や座席を指定して決済画面へ進んだ時、カード会社に誘導され、そこでIDとパスワードを訊ねられたのです。2年前はそんなことをしなかったように思うのですが。

 なぜそう感じたのかというと、カード会社のIDとパスワードはまだインターネットの扱いに慣れていない時期によくわからないままつくったもので、暗記しにくい文字列になっているのです。記録を確認しないと打ち込めない――。
 なんとなく不安になって、私は調べたIDとパスワードの最初の3文字ずつを、紙にメモして財布に入れました。これが後で役立ちます。


【楽になったようだが、私には面倒だ】

 国立西洋美術館のオンライン予約については3年前、「ウィーン・モダン」の展覧会を観に行った際、チケット売り場へ続く長い列の途中で「オンライン予約のご利用をお願いします」の表示に気づいて、その場でチケットを購入したことがあります。現在はそれに加えて、コロナ対策の時間予約になっていますから、オンライン・チケット購入は必然です。東京都美術館も同じでした。

 列車の方は自宅から予約しましたが、美術館は別件との兼ね合いで東京での予約となりました。そこで当日の朝、スマホから手続きを始めたのですが、JR同様、決済の段階でカード会社のサイトに誘導され、そこでIDとパスワードを求められます。昨日の今日ですのでさすがに覚えていましたが、確認のためにメモは役立ったわけです。
 では3年前はどうしたのか?

 この記事を書いている今日になって分かったのですが、おそらく当時はその場でクレジット・カードを取り出して、番号や名前を打ち込んだのです。列車予約も同じで、コンピュータの前でカード番号を読んでいたに違いありません。
 今はカードを取り出さなくて済む分、安全面でも便利になったということです。

――と、しかしカード紛失の危険性は減っても、私の齢になるとIDやパスワードの記憶紛失の危険性は残ります。その方がよほど危ない。
 世の中のキャッシュレス族は、IDやパスワードを全部頭の中に入れて動いているのでしょうか? そうなるとその方がよほどすごい!


【今さら現金かい?】

 そうやってスマホの画面提示だけですんなり入れた美術館ですが、そこでも意外なことが起こります。

 これだけ美術展に行きながらさっぱり鑑賞眼の身につかない私は、音声ガイドを借りるのを常としているのですが、西洋美術館の600円の使用料が現金のみなのです。クレジット・カードも使えなければオンライン決済もできない――。同じことは東京都美術館でも起こります。

 田舎者からすれば花の東京ですから、あれもこれもキャッシュレスかと思ったらそうでもない。入った寿司屋が現金のみ、上野公園でパントマイムをするパフォーマーへの投げ銭も現金(これは当たり前か)。
 さらに不思議なのが、キャッシュレスとは直接関係ありませんが、セルフレジです。


【なんでセルフレジを使わないの?】

 娘のところの鉢植えの植物が惨めなことになっていて、美術展帰りにダイソーで園芸用の土を買うことにしました。買い物はすぐに済んで、さて支払いと思ったら、一人しかいないレジ係の前には10人近い列ができています。担当の女性は「先の方にセルフレジがありますから、そちらをお使いください」と繰り返し叫ぶのですが、誰も行こうとしない。

 翌日、帰宅の列車に乗る前に駅構内のコンビニで買い物をすると、セルフレジが3台もあるのにここでも一人も使わない。もちろん初心者の私は怖くて行けない。
 それにしてもこれだけ電子化して人間の手も省けるようになった世界で、世間知らずで田舎者の私はともかく、都会生活に慣れた人たちがなぜ機械ではなく人間の方に寄って行くのか、セルフレジはそんなに使い勝手の悪いものなのか――。
 それが最後に残った疑問でした。

(この稿、終了)