カイト・カフェ

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「時代は変わる、自分も変わる」~その人生に飽きちゃわない?② 

 10年もまじめに打ち込めば、たいていのことには飽きが来る。
 その先をどう生きるかは個性だ。
 若者よ、
 何十年も先まで、同じ状況、同じ自分が続くとは限らんよ。

という話。

(写真:フォトAC)

【その人生に飽きは来ないの?】 

 私は大学に通いながら20歳から家庭教師と学習塾の仕事を始め、そのままのズブズブ就職で学習塾の経営会社に入ると、29歳で会社を辞め、30歳からは中学校教諭、40歳から小学校に異動して、最後の10年は小中両方の管理職をやって定年退職しました。
 その後2年間だけ児童館の仕事をしましたがまったく性に合わず、以後、家にこもって1a(アール)余りの畑で野菜を育てながら、晴耕雨読、家事全般、現職教員の妻のアシスタントなどをして過ごしています。そしていま、少々飽きつつあります。
 たびたび書いていますがここから先の人生設計はかなり難しく、むかし大病したこともあって長生きは望めないものの、終着点が分からないのでどう生きようか迷っているところです。

 就職や転職、あるいは校種の変更については、それぞれの時にそれぞれの理由はあるのですが、もしかしたらひとつのことを10年も続けると飽きてしまうのではないのかとも思ったりするのです。
 昨日の歯科医や耳鼻咽喉科の意思についても思うのですが、どんな仕事でも10年間一生懸命がんばれば、たいていのことにはめどがつき、己や状況の限界が見えてきます。そこでどういう生き方を選択するのか、そこに個性が出てきます。
大きく見れば教育畑という枠内、後半の30年間は公立学校教師という同じ枠内ですが、私の場合は飽きて、別のことを心待ちにする性格だったのかもしれません。

 しかし世の中の半分くらいの人たちは、表向き、いつまでも同じ生活を続けていられるように見えます。どうしてそれができるのか、私はいつも不思議でした。
もちろんバカにしてのことではありません。
 いつだったかテレビのドキュメンタリー番組で沿岸漁業の漁師さんが「おれは必ずこの港で、一番の漁師になる」と語っているのを見て、ああ、その情熱はわかる、私も同じ立場だったら同じように考え、同じように頑張るに違いないと思ったりしました。
 つまり「同じ生活を続けている人たちが分からない」というのは純粋に知識がないということであって、教えてもらえば大半は理解できるのかもしれません。


【頑固で臆病な保守主義者たち】

 話は少し変わりますが、かつて「2ちゃんねらー」という言葉が流行した時代、私もご多分に漏れずその世界で丁々発止のやり取りをしていました。とは言っても自分の土俵(学校教育)でしか勝負しないので基本的には連戦連勝、いまの言葉で言えば論破王の称号を与えてやりたいくらいでしたが、その後、叩き潰したはずのスレッドがそれまでのやり取りを全部無視して、「だけど、やっぱりなあ」とか言ってゾンビのごとく復活してくるのを見て、その世界から足を洗いました。

 現在はたまにTwitterやらYahoo!コメントに書き込む程度で、本格的な戦闘には加わらないようにしています。書き込みをしても「ああ、この書き方だと『そう思わない』(親指が下を向いた手のマーク)がたくさんつくのだな」とか、「おやおや、これに『そう思う』がいっぱいつくのかぁ」と、そんなことを楽しんでいます。

 最近「おやおや」と思ったのは、6月14日のYahooニュース「4人に1人が結婚願望なし 30代男女、婚姻は戦後最少」に対する私のコメントへの反応です。

 ニュースは、政府が「令和4年版男女共同参画白書」を閣議決定したという内容で、
「婚姻歴のない30代の独身者は男女とも4人に1人が結婚願望なしと回答。理由として『自由でいたい』などのほか、家事育児の負担や経済的な不安が挙がった」
と簡単に紹介している程度のものでしたが、そこに着いたコメントが、「オレもオレも」という感じだったので、ついひとこと言いたくなったのです。そこでこんなふうに書きました。
20代独身・30代独身が楽しく面白そうなことは分かるけど、50代・60代の独身に面白そうなイメージがない。
私は35歳まで独身で面白おかしく暮らしていたけど、ある日、そのまま45歳、55歳になることを考えたらビビった。そのままじゃあきっと飽きるし、たぶん死ぬほど退屈で孤独ではないかと思った。
それで慌てて結婚したが、結婚生活はかなり刺激的で面白く、子どもができると飽きている暇もない。結婚で人生をリセットしたのはやはり正解だと思っている。
現代の若者は、いまの生活が20年も30年も続くことに不安はないのだろうか? 50歳独身で楽しく生きるには、それなりの才能とか財力とか必要だと思うのだが・・・

 時間的にずいぶん遅れての書き込みでしたし、内容も大したものではないので反応は薄いと思ったのですが、「そうは思わない」があれよあれよという間に18件も入って、「そう思う」は二つしか入らなかったのです。
 よくも嫌われたものだと感心しました。これが私の最後に書いた「現代の若者は、いまの生活が20年も30年も続くことに不安はないのだろうか?」に対するものだとしたら、むしろすごいことだと、皮肉なしに思ったものです。


【時代は変わる、自分も変わる】

 私も若いころはそういう人間だったのでよくわかるのですが、生涯独身でこのまま行こうという人の一部は、頑固で臆病な保守主義者です。とにかく今のままがいい、変わることがイヤなのです。

 今の私も再びの保守主義者で、妻と二人暮らし、週に6日母の家に泊まり、日中は自宅で畑仕事や個人の仕事をして過ごす、その生活がいつまでも続けばいいと強く思っています。
 しかし母が永遠に生きているわけでもなく、妻も今年度を最後に、教職を去ります。母が寝たきりになるかもしれませんし痴ほうで徘徊し始めるかもしれません。妻が最晩年にとんでもないことを始めたりする可能性もあります。状況は「ずっとこのまま」を許してくれません。
 一方で、私自身も「いつまでもこのままでいい」と言いながら、こころの隅で飽きも来ています。心身の衰えも顕著です。

「自由でいたいから結婚しない」とのたまう若者も、いつまで「自由でいたい」と思っていられるか。いま一緒に遊んでくれる友だちも、いつまでも変わらずにいてくれるのか。そして現在、面白いと思っていることが、色褪せず数十年先までも面白いままでいてくれるのかどうか――それは分からないというより、むしろありえない話です。

 50歳で一度も結婚したことのない男性の平均寿命は68歳だそうです。将来的には65歳で定年退職となり、わずか3年で死ぬことになります。それでいい人生もあると思いますが、一般的にはそれでいいとも思えません。