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「『終活にやること10選』を考察する」~かくも厄介な人生の終末③

 とりあえず「終活」が分からないので調べてみた。
 すぐに見つかったのが「終活にやること10選」。
 ひとつひとつを見て行くと、
 この世界、案外、楽で難しいものだ

という話。

(写真:フォトAC)

【終活にやること10選】 

 さて終活だと机に向かってハタと困ったのは、そもそも終活って何をするのかということです。そこでNDN(ネット大好き人間)としてはとりあえず検索に走るのですが、いきなり箇条書きされたものが出てきます。
「終活にやること10選」

 それによると、
(1) エンディングノートを作る
(2) 資産を見直す
(3) 遺言書を作る
(4) デジタルデータを整理する
(5) 不用品を片付ける
(6) 断捨離をする
(7) 葬儀の準備・予約をする
(8) お墓の準備・希望をまとめる
(9) 人間関係を整理する
(10) 今後の生活について考える
 よくわかりませんが何となく全部を網羅している気がします。そこで1番のエンディングノートから見て行くことにします。


エンディングノート

 エンディングノートについては昔、葬儀社組合みたいなところからもらったものがありました。見ると最初の項目が自分史。学歴だとか職歴だとか、あるいは座右の銘だとか思い出だとか――それらは人生の足跡を残したい人には必要かもしれませんが、私には必要ありません。
 次の項目の「親戚や友人の名簿」はなければ困りますが、年賀状用ソフトがあってその住所録が使えますから、心配ならプリントアウトしておけばいいでしょう。

 次は、もはやいかにもありそうなことですが、万が一のときの私に対する処しかた。
「病名や余命告知は必要か」「臓器提供の意思はあるのか」「治療はどのあたりまで行うのか」といったことで、これは大切です。しかし私が倒れたとき、まず「エンディングノートを見よう」と思いつく家族がいるとしたらむしろ悲しい。
 やはりこういうことは日ごろから口にして意思疎通しておくべきでしょう。介護をどのように受けるかといった点も同じです。

 エンディングノートの4項目が財産に関するページ。これについては「資産の見直す」「遺言書を作る」に関わる部分で、大切ですから別に考えましょう。「デジタルデータを整理する」もほぼ同じ内容です。私の持っているエンディングノートはこの部分が2ページほどしかなく、だいぶ足りない気がしました。

 最後が葬儀と墓に関する部分です。しかしさすが葬儀社組合のエンディングノート、この部分がやたらと詳しくなっています。
「訃報連絡をしてほしい人」「しないでいい人(これ、ひとによっては大事かもしれない)」「葬儀の形式・宗派」「会場」「遺影の指定」「葬儀に飾ってほしい花」「葬儀に使ってほしい音楽または映像」「読み上げてほしい自分自身の言葉」「式場に飾ってほしい趣味の品々」「棺に一緒に入れてほしいもの」等々。
 そこまで自分の葬儀にこだわる人もいないと思いますが、逆に言えば連絡先や葬儀の形式、会場・遺影などはこちらで指定しておけば残された者は楽、ということもあります。考えておきましょう。
 
 お仕着せのエンディングノートは便利と言えば便利ですが不足も過剰もあり、私としては項目だけ参考にして、Wordか何かで別に自分なりのものをつくっておきましょう。


【断捨離は必要なのか? ゴンベがタネ蒔きゃカラスがほじくる我が家】

 「終活にやること10選」の5番目と6番目の「不用品を片付ける」と「断捨離をする」ですが、私の弟が20年ほど前からものすごく熱心で、勢い余って94歳の母の家にまで手をつけ、おかげであれこれなくなって不自由しています。

 そもそも断捨離はモノを整理して空間を広げ、仕事や生活の効率を上げるためのものです(と私は思っています)。整理は必要ですが、十分な空間のある人は何も捨てることはない。私の家も母の家もそうですが、田舎のそこそこの家で、子どもたちが自立した後は少なくとも子ども部屋が丸々空いていて物置代わりに使えます。すると、
「そんなにたくさんモノを置いて、残された人間に整理させるつもりか」
という話になりますが、自分が断捨離する代わりに業者を雇うだけの金を残せばいいのです。悩んで選んで捨てる労力を金で買うのです。その金が現金でほしければ、残された家族が断捨離すればいいだけです。

 我が家では私が整理好きで比較的自然に断捨離を行っていますが、そうやって作った空間を妻が次々と埋めていきます。妻には年上の友人がたくさんいて「遺品のつもりでもらってちょうだい」とか言われて他人の断捨離に付き合わされ、とりあえず必要のないモノがどんどん増えていきます。
 「ゴンベがタネ蒔きゃカラスがほじくる」方式の我が家ですから、「不用品整理」も「断捨離」も諦めざるを得ません。
 それで困ることもなさそうですからけっこうでしょう。


【残された問題】

 7番目の「葬儀の準備・予約」はちょっとした衝撃でした。というのは社会科教師として、民法を扱うとき、
「婚姻届けは本人が出さなくてはいけません。1人だけでもいいのですが必ず本人が行きます。しかし死亡届は本人が出向く必要はありません。怖いですから」
と言って笑いを取るのがテッパンだったからです。それを、葬儀の予約ができるとは!
「スミマセン、私、来月10日に死ぬので12日あたりに葬式をしたいのですが予約取れます?」
とか言うのでしょうか?

 調べるとこれは日にちを定めない予約で、予め葬儀の形式や希望を伝え、費用の一部を支払っておくといったもののようです。身寄りのない人には特に便利みたいですが、私のところは菩提寺が決まっているから関係ありません。
 また墓は、死んだ父のいるところがありますからこれも問題ないでしょう。

 9番の「人間関係を整理する」――これって自然にできません? 面倒くさくて嫌な関係だって「終活の関係で、あなたとは今後おつき合いしません」では角が立つでしょう。
 10番目の「今後の生活について考える」は、“今の生活が続けばいい、大きな変化があったらその時に考えればいい”派の私には関係ありません。

 そうなると結局、終活というのは「資産を見直して遺言書を作ること」ということになります。少なくとも私にとってはそうです。

(この稿、続く)