二日に渡ってテレビドラマの悪口を言ってきたが、もちろん秀作もある。
マンガを原作としたものはほぼ間違いない。
「一に脚本、二に役者、三に演出」ともいう。
しかしプロデューサーも含めたヒット・スタッフ・セットというのもあるのだ。
という話。(写真:フォトAC)
【NHKの底力、民放の底力】
マンガを原作としているテレビドラマには、いちおう挨拶をしておくことにしています。実写にして魅力の薄れるものも少なくないみたいですが、そもそも原作の方を読まないので私には分かりません。ただ、すでにマンガで定評を得たものを実写にするわけですから、一定以上の作品には仕上がっているはずです。今年で言えば夏のドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』が面白い作品でした。
ところがこの『ハコヅメ~』、第4話が放送されたところで主演の永野芽郁さんが新型コロナに感染。2週間に渡って特別編を放送することになったのです。第3話放送時点ではまだ感染は明らかになっていなかったのですから、実際には放送できるストックが1週間分しかなかったわけです。
これと対照的なのがNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』で、これは2020年4月1日に撮影中止が発表されてから6月第一週(7日)まで、何と2ヵ月1週(全11回)分ものストックがあったのです。NHKの巨大な予算と時間を物語るものですが、逆に言えば、民放には低予算で次々と作品を出す底力があるという見方もできそうです。
ちなみに「ハコヅメ~」主人公の勤務する町山交番の、外観は生田スタジオ敷地のオープンセット、内部はスタジオ内。町山警察署の外観は東村山市役所を借りたと言います。俳優のギャラにはそれほど差はつけられそうにありませんから、民放もそれなりに頑張っているということでしょう。
【プロデューサーや脚本家・演出家で作品を選ぶ】
それが一般的かどうか分からないのですが、私の家のビデオレコーダーは予約しなくても新しいドラマを次々と録画してしまう機能がついています。したがって何の予備知識もないのに第一回を見落とさずに済む、ということが可能になります。この秋、おかげで出会うことができたのがTBS『この初恋はフィクションです』です。深夜0時過ぎの放送ですので、VTRの機能がなければ見ることのなかった番組です。
「TBSスター育成プロジェクト」というオーデション番組で選抜された若者が中心の学園ものラブコメディで、知っている役者さんはほとんど出て来ません。直前まで素人同然だった俳優ばかりで、時々ぎこちない演技もあったりしますがそれも初々しく、妻などは、
「ババア(自分のこと)がキュンキュンしてしまう」
などといってBGD(バックグランド・ドラマ)ではなく、テレビの前で正座してみています。
私は、なにも最初からこうした若者向け番組を見ようと思ったわけではありません。ただ番組紹介に「秋元康 原案・企画」という一行があり、しばらく前のテレビ東京『共演NG』がやはり「秋元康 原案・企画」が面白かったので見る気になったのです。
そんなふうに、タイトルや出演者によって見るのではなく、プロデューサーや脚本家・演出家が誰かによって作品を選ぶことは少なくありません。「一に脚本、二に役者、三に演出」と言いますから正しい見方でしょう。
私が好きな脚本家は(倉本聰・山田太一といった大御所を除けば)宮藤官九郎・北川悦吏子・野木亜紀子・中園ミホ・奥寺佐渡子・金子茂樹といったところです。
【ヒット・スタッフ・セットによる、この秋一番の『最愛』】
この秋、そうしたスタッフの観点から選んだのが、吉高由里子主演のTBSドラマ『最愛』でした。
プロデュースが新井順子、脚本が奥寺佐渡子・清水友佳子、演出は塚原あゆ子、音楽が横山克という組み合わせは、かつて『Nのために』『リバース』を仕上げたチームで、このメンバーから脚本家を野木亜紀子に代えたのが『アンナチュラル』のメンバー。いずれの作品も音楽に特徴があり、作品のどこにも破綻のない良質の推理ドラマでした。
明日最終回となる『最愛』にしても、よく見直すと実に細部が丁寧。例えば番組後半で問題となる所有者限定のペンは、第一回でも第二回でもさりげなく映像に残されていますし、あとで回収されるべき伏線らしきものがあちこちに散りばめられています。主人公の父親が殺人現場に出くわした時、陰で動いている人影のようなものは何なのでしょう?
私はこうした丁寧で誠実な仕事が大好きです。
(以下、私と娘のシーナがLINEで交わした『最愛』の推理物語。ハズレたら削除します)
推理を外しましたので、予定通り削除しました。